水島新太郎(同志社大学嘱託講師)

 2015年、オバマ政権下のアメリカで、最高裁によって同性婚を認める判決が出された。それを皮切りに、わが国日本では東京都渋谷区で同性カップルに対して結婚関係に準ずるパートナーシップ証明書が交付された。また、同じ島国で日本と親交の深い台湾では同性婚を認めない民法は違憲とする声が高まるなど、近年LGBT(性的少数者)を取り巻く社会環境が大きく変わろうとしている。

 今年4月、大阪市が30代と40代の男性同性愛者カップルを養育里親として認定したことがメディアを中心に大きく取り上げられ話題となっているが、男性同性カップルの里親認定に対して世論は賛成、反対の真っ二つに分かれている。ここでは、明確な「賛成」の立場からセクシュアル・マイノリティーの人たちが生きやすい社会が何なのか、いくつかの点から取り上げ考えていきたい。

 2012年、アメリカで公開され話題を呼んだ映画『チョコレートドーナツ』をご存じだろうか。この映画では、男性同性愛者のカップルがダウン症の子供を育てるという、愛に満ちあふれた人間関係が描かれているが、同性愛者であるという理由だけでカップルは裁判で親権を奪い取られ、子供は孤独の中で命を落とすという大変悲しい結末で映画は幕を閉じる。

 しかし、この映画は同性カップルの直面する差別問題だけを取り上げているわけではない。作中では、同性カップルの子育てを好意的に受け入れ、理解し、他者からの批判を恐れず彼らのために証言台に立つ心優しい友人たちも描かれている。この作品で同性カップルは裁判に敗れ、自分たちの愛した子供の命まで奪われることになるが、彼らは決して司法に負けたわけではない。なぜなら、彼らには自分たちを受け入れてくれる周囲の優しさあふれる理解があったのだから。
映画「彼らが本気で編むときは、」の初日舞台あいさつに出席した(左から)荻上直子監督、柿原りんか、桐谷健太=東京・新宿
映画「彼らが本気で編むときは、」の初日舞台あいさつに出席した(左から)荻上直子監督、柿原りんか、桐谷健太=東京・新宿
 『チョコレートドーナツ』のように、海外ではLGBTを主題として扱った映画作品が数多く製作されているが、日本でも数は少ないもののセクシュアル・マイノリティーの人たちを描いた映画作品がいくつか製作されている。今年2月に公開された、トランスジェンダーの男性と異性愛者の男性カップルを描いた映画『彼らが本気で編むときは、』もそんな作品の一つだ。監督を務めた荻上直子氏は、文芸誌『ダ・ヴィンチ』(2017年3月号)の中で自身のアメリカ生活を振り返りながら、日本では「確実に存在するはずのセクシャル・マイノリティの人たちになかなか遭遇しない」と、彼らの存在が見えないことに対する違和感について実直に語っている。