小笠原誠治(経済コラムニスト)

 森友学園に対する不当な価格での国有地売却疑惑が今年2月上旬に発覚して以降、すでに100日以上の日時が経過し、今や加計学園疑惑に焦点が移ってきているが、いまだに真実の解明にまでは至っていない。

 しかし、森友学園疑惑を含め多くの国民は官邸の言い分に納得できないでいるのではないか。なぜならば、多くの疑惑というか、疑問に対する官邸側の説明はどれも不十分で納得がいくものではないからである。特に資料はすでに処分してしまったとか、そのような文書は存在しないというような言い訳を信じる者はほとんどいないと言っていい。

 その一方で、どれだけ疑問が浮かんでも決定的にクロだという証拠がない以上、これ以上の追及はできないとの見方もあり得る。しかし、決定的な証拠は本当に見つかっていないのか? 答えはノーである。いや、これほど多くの証拠が見つかっているような事件はまれであると言ってもいい。しかし、それでも総理が責任を取らずに済んでいるのは、官邸の「アンコン(アンダーコントロール)」が効いていて、そうした有力な証拠が無視されているからなのである。

 ところで、「西山事件」をご存じだろうか? 
 西山事件は、1971年の沖縄返還協定との関係で、取材上知り得た機密情報を国会議員に漏洩(ろうえい)した毎日新聞社政治部の西山太吉記者らが国家公務員法違反で有罪となった事件で、「沖縄密約事件」や「外務省機密漏洩事件」とも呼ばれる。
沖縄密約訴訟で敗訴が確定し、記者会見する元毎日新聞記者の西山太吉氏(手前)=2014年7月
沖縄密約訴訟で敗訴が確定し、記者会見する元毎日新聞記者の西山太吉氏(手前)=2014年7月
 第3次佐藤内閣の1971年、日米間で沖縄返還協定が締結されたが、その際、米国政府が地権者に支払う土地現状復旧費用の400万ドル(約12億円)を日本政府が米国政府に秘密裏に支払うという密約が存在することがばれてしまったのだ。

 そうした密約が存在することを野党から追及された佐藤政権はどのような作戦に出たのか?

 佐藤政権は検察とタッグを組み、そしてメディアも動員して、西山記者は女性事務官に酒を飲ませて泥酔させ、半ば強制的に肉体関係を持った上で、外務省の極秘電文のコピーを盗み出させたという主張を展開したのだ。

 そうしたイメージが世間に広がるにつれ政府を追及する勢いがなくなってしまい、密約の存在はうやむやにされてしまったと言われている。だが、真実はどうであったかといえば、密約は実際に存在したことが40年近く経過した後、明らかになっている。

 文科省の前川喜平前事務次官が次官時代に「出会い系バー」に出入りしていたということが事実だとして、どうしてそのようなことがニュースになり得るのか? 官邸はそのような些細な事実を暴露するだけの信じられない記事を読売新聞に書いてもらい、前川氏のイメージをダウンさせ、そのような男の言うことに信ぴょう性はないという作戦に出ているとしか思えない。

 現に、官邸関係者はメディアに対して、「前川がパクられたらどうするつもりなんだ。犯罪者の証言を垂れ流したことになるぞ」などと脅かしていたとも噂されている。