高橋洋一(嘉悦大学教授)

 文部科学省の前川喜平前事務次官が5月25日の記者会見で、加計(かけ)学園問題に関する「総理のご意向」などとする文書を「本物だ」と発言した。官僚のトップであった事務次官がなぜこのような“告発”を行ったのか。
 筆者は同年代の官僚だったがまったく面識はない。ただ、本当に前文科次官だったの? と思うくらいに、会見の中身は、筆者から見ればボロボロだ。それについては、29日の「前川・前事務次官の記者会見は、官僚目線で見れば『大失敗』だった 致命的なミスがそこかしこに…」を見てほしい。

 簡単にいえば、文科省は閣議決定に獣医学部の参入条件を書きながらそれを示せなかったという、許認可権を持つ役所としては情けないお粗末さであり、内閣府との議論に負けただけだ。それなのに、自らの責任を他省庁のせいと責任を転嫁する厚かましさで、文科省の事情を臆面もなく説明する前川氏の会見に対して、筆者が記者であればその場で同氏の間違った考え方を正していただろう。

 実際に議論で完勝しただろう内閣府は、「総理の意向」なんて使うこともなかったはずだ。むしろ、例の文書、筆者は文科省の官僚が書いた可能性があると思っているが、むしろ、内閣府に完敗したのをカムフラージュするために、「総理の意向」なる言葉を文科省官僚が自省の文書に書いた可能性すらあると思っている。

 そんなことも予感させる会見を行った前川氏はどのような人か。

 はっきりしているのは、前川氏が3月に辞任したのは、文科省の天下りを斡旋(あっせん)していたからだ。これは、組織ぐるみで自らが違法である天下り斡旋を当然のように行っていた。他方、今回の加計学園問題では、新規参入阻止、つまり既得権を擁護し、新規参入者を不当差別しながら、新規参入を持ち出す内閣府を「文科省行政の横やり」という。まさに、役人の既得権擁護だけの役人人生だ。

 一方、筆者の役人人生は、官邸で天下り斡旋禁止と特区による新規参入を推進しており、前川氏とはまったく真逆だ。天下り斡旋禁止については、第1次安倍政権時代に筆者が企画立案した国家公務員法改正によるものだ。

 天下り問題を通して、今回の問題をみてみよう。筆者にはこうした役人時代の経験があるので、天下り斡旋違反については、ことのほか厳しいだろう。以前の論考でも、天下り問題を論じたことがある。