天下りはそれほど悪くないという人もいる。おそらく、前川氏も同僚を助けて何が悪いのかと思っていただろう。しかし、斡旋されて天下った人はいいのかしれないが、その半面、実力がありながら、不条理にも就職できなかった人や昇進が遅れた人は必ずいるはずだ。そうした人の無念に思いがいかないのだろう。

 はっきりいえば、まわりに優しいが、天下りの背景にある大学の交付金などの補助金を私物化していることに気がつかないのだろう。

 今だから明かすが、40年くらい前に筆者も不愉快な経験をしたことがある。東大数学科を卒業して、文部省所管(当時)の統計数理研究所に勤めることが内定していた。ただし、その当時は内定といっても、きちんとした手続きがあるわけでない。数学科の大学院に行こうと思っていたら、統計数理研究所のある教授が、東大の筆者の恩師を通じて一人採用するからどうかといってくれた。大学院のように学費を払うのではなく給料をもらいながら、研究して、将来は博士号もとれるということで、お世話になることを決めた。個室、秘書もあてがってもらい、毎日論文を読み、時たま研究成果を発表するという恵まれた環境だった。正式採用は、大学卒業後ではなく、ちょっと見習い期間があった。

 ところが、正式採用の直前、受け入れ教授から申しわけないが、採用はできないといわれた。筆者を推薦してくれた東大の恩師が事情を聴くと、文科省からの横やりがあり、別の人が採用になったということだった。その当時、筆者は社会の仕組みは難しいなと思ったくらいで、怒った記憶はない。そのおかげで、公務員試験を受けて大蔵省に入ったわけで、筆者に不満はなく、まさに人間万事塞翁が馬である。
 今から思えば、筆者もたまたま東大の恩師の推薦という公募ではないし、筆者を採用するのが絶対的に正当ともいえない。ただし、給料なしとはいえ一定期間事実上の研究員生活をしていたので、文部省の横やりが不愉快であったのは事実だ。

 ところで、筆者の天下り問題に関する論考で、筆者の独自の表を見てほしい。驚くほど多数の大学が、文科省に限らず天下りを受け入れている。

 筆者は、受け入れ大学を気の毒に思っている。官庁ににらまれないようにするために、必要経費と割り切る大学関係者も多い。しかし、そうした大学の弱みにつけ込み、天下りを押し込む官庁は本当にひどい。