意外に思われるかもしれないが、今治市は全国的に見ても経済的にかなり豊かな地方都市だと言っていい。それというのも、地場産業がここ近年好調に推移しているからに他ならない。今治市の経済を支えている主力産業は大きく二つ。一つは、全国的なブランド化に成功した「今治タオル」を中心とする繊維業。そしてもう一つは新造船竣工量が全国トップで、世界シェア第2位の座にある「今治造船」を中核とする造船業だ。

 このことからも明らかなように経済的には活況を呈する今治市だが、それでも他の地方都市同様に人口減少化という悩みを抱えているのだという。もっとも今治市の出生率は1・8と、安倍内閣が掲げる目標数値(全国平均ベース)1・8についてはもう既にクリアしているのだが、人口増加に転じるレベル(2・04~2・05以上)への到達は、まだ遙かかなたの状況にある。そして今治市の出生率は、現状でもはや頭打ちの状態にあるのだという。

 その理由について、今治市在住の企業経営者がこう説明する。

 「その最大の理由は、高校を卒業した人が、大学に入学するために市外、県外へ転出してしまい、そのまま就職してしまうことにある。そうした状況を変えるためには、今治市に大学を誘致し、さらにはそのまま就職できる環境を整える必要がある」

 そうした意味でも、獣医学部の開設は、今治市にとってはまさに「理想形」だったと言えよう。

「加計学園」が岡山理科大の獣医学部を新設予定の建設現場
=5月17日、愛媛県今治市(共同通信社ヘリから)
「加計学園」岡山理科大の獣医学部を新設予定地
=5月17日、愛媛県今治市(共同通信社ヘリから)
 ただ、加計学園を伴った今治市の獣医学部誘致に関して言えば、平成19(2007)年以降の8年間で、実に15回もの申請が繰り返されてきたが、ことごとく申請がはねつけられている。

 これは意外に知られていないことだが(というよりも意図的に無視されているきらいがあるが…)、実を言うと第一次安倍政権下でも、この申請は却下されているのである。

 もし仮に朝日新聞など安倍首相に批判的なメディアが指摘するように、安倍首相と加計学園との間に特別な関係があり、それをタテに強引に事を進めようとしたならば、とうに今治市の獣医学部開設は認められていたはずだ。

 一連の事態が進み始めるのは、第二次安倍政権下で、規制改革などの経済活性化策を進めることを目的とした「日本再興戦略2015」が閣議決定され、国家戦略特区に獣医学部を新設する方針が示されてからだ。

 この事実だけをとらえても、それでもなお規制官庁の思惑だけで獣医学部開設を認めないというのは「岩盤規制」そのものと言えないだろうか。

 ただ、いずれにしても前川氏が「正義の告発者」ではないことは明らかだ。

 その前川氏が、獣医学部開設に絡んで今治市を訪れたという話は、少なくとも筆者は寡聞にして知らない。週に3回も「出会い系バー」に行く時間があったならば、ぜひとも今治市に足を運び、地域の実情に目を向けるべきだったのではないだろうか。残念ながら、筆者の取材では今治市に出会い系バーは見当たらなかったが…。