いよいよ公示された“年の瀬衆院選”。12日間の選挙戦が始まったが、いつにも増して有権者の関心度は薄いようだ。その理由は、「なぜいま、解散総選挙をするのか」といった疑問に他ならない。

 安倍晋三首相は解散に先立ち、11月18日の会見で「消費税を現在の8%から10%に再増税するのを1年半先送りする。しかし、18カ月先送りした2016年4月には、景気条項を外し、どんなことがあっても再増税は実施する」という主旨の発言をし、そのために「アベノミクスを引き続きやらせていただきたい」と述べた。つまり、今回の解散総選挙は、アベノミクスの信任選挙だと位置付けたのだ。

 果たして、そうなのだろうか。本当に今回の解散はアベノミクスを問う解散なのだろうか。多くの永田町関係者や識者らは「大義がない」と、首を傾げる。野党各党は、再増税の先送りに異を唱えていないからだ。国論を二分するような話なら、解散して国民に信を問うというのは成り立つが、どうやらそうではない。

 そんななか、自民党関係者はこう語る。

 「実は、解散するタイミングは意外と少ない。来年は統一地方選挙があり、年が明けたらそれ一色に染まる。統一選後の地方議員はなかなか動かない。来年夏の解散を言う評論家など多かったが、選択肢としてはあり得ない話だったんだよ」

 衆参合わせて過去5回、統一地方選後に国政選挙が行われたが、自分の選挙を終えたばかりの地方議員は積極的に動くことはせず、自民党にとって苦しい選挙戦の記憶があるのだというのだ。つまり、2016年の12月の任期満了までの政治カレンダーをめくれば、来年は統一地方選、再来年は夏の参院選があり、この機を逃せば参院選に合わせた解散しか手立てが無くなる。消去法による選択肢で“勝てるタイミング”はこの年末だったというのである。

 このような話を聞く限り、党利党略、個利個略の解散としか映らない。大義の欠片も感じない。しかも、9月の内閣改造以降、安倍内閣の新大臣は相次ぐスキャンダルに見舞われ、このままいけば閣僚辞任ドミノを引き起こし、政権崩壊が囁かれていた時期でもある。単なる延命策としての解散ではないのか、そんな疑問すら持たれる解散だ。だから、有権者の多くは白けて、前回2012年の最低投票率59.32%を大きく下回るとの予測が出ているのだ。

 実際、多くの町の小売業を営む方は、顔を歪めてこう言う。

 「今年4月に消費税が8%になって以降、売り上げは全く伸びていない。なんとか年末商戦で今年の“負け分”を取り返そうとしていたのに、こんなんじゃ期待できない。一体、安倍首相は何がしたいんだ」

 円安の影響で輸入部材の仕入れ値は急騰し、さまざまな商品が値上げを余儀なくされている。個人消費が伸び悩んでいる要因の大きな一つだ。その直撃をモロにかぶっているのが、小売業者に他ならない。その売り上げの落ち込みを取り戻そうと、年末商戦に賭けていた矢先、冷水を浴びせるような解散だったという。しかも「何がしたいのか分からない解散」(前出・小売り業者)では、怒りが倍増し、政治離れに拍車をかけるだけだ。

 多くの国民がアベノミクスを実感できないなか、アベノミクスの信を問うと言われて、何を1票に込めればいいのだろうか。だからこそ、低投票率の話は現実味を帯びている。

 低投票率になれば、基礎票が見込める自民、公明が有利だと見られている。事実、12月1日、NHKが発表した世論調査でも政党支持率は自民党が41.7%と他党を大きく引き離していた。このままいけば、解散まえの295議席を大きく割ることはないと見る専門家も出てきている。

 責任は野党側にもある。第三極として、非自民、非民主の受け皿だったみんなの党は解党した。多くの野党がまとまらず、ようやく選挙区調整で候補を一本化するのが精一杯。かといって、選挙協力まで進まないので、有権者からすれば選択肢の幅がなくなってきたとしか映らない。本来、「非自民勢力を結集して、選挙後はこのような国会運営で自民党の暴走を食い止めます」というような野党連携の選挙が出来れば、選択肢は広がる。しかし、それが無い以上、以前は民主党に投票していた人が維新の候補しかいないからといって維新候補に投票するとは思えない。野党にとって一本化調整は入口であって、そこから戦略を練る必要があるのに、出来ないまま選挙戦に突入した感が否めないのだ。それが、“野党離れ”の世論調査に繋がっている。

 疲弊したこの国の論点は数多くある。集団的自衛権の憲法解釈容認を臨時閣議で決め、今後は行使の前提となる個別法の整備を進めることとなる。この是非は考えなくてはならない。また、原発再稼働の問題も大きいだろう。単に、景気だけが論点ではない。

 要は、有権者がいまの政治を自分の考え、生活に置き換えて今後はどうなればいいのか判断するより他ない。加えて言うなら、子どもや孫の世代まで思いを馳せることが重要だ。政治に失望し、投票所に行かないのは簡単だが、次の世代のためにも、1票をムダにしないでほしい。過渡期のなか、今後の政治の行方を決めるのは、有権者の1票に他ならないからだ。