2017年06月03日 18:31 公開

8日投開票の総選挙を目前に、与党・保守党党首のテリーザ・メイ首相と、最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は2日夜、それぞれ別個にBBCの政治番組「クエスチョン・タイム」の選挙特番に出演し、会場やデイビッド・ディンブルビー司会者から相次ぐ厳しい質問を受けた。

実質的な昇給が2009年以来ないという看護師はメイ首相に対して、保守党が導入した公的部門の賃金抑制を厳しく批判した。

かねてから英国の核武装に反対してきたコービン党首は、核の先制攻撃はしないと発言。このため、もし英国が「北朝鮮やイランから核攻撃を受けるとなったらどうするのか」と、会場の大勢から糾弾された。

両党首は90分番組に別々に出演した。コービン氏はメイ氏が「1対1」の直接討論を拒否したと述べ、「これが討論ではなく質疑応答なのはとても残念です。総理大臣が討論に参加しないのは残念だと思う」と強調した。

会場参加者から45分にわたり追及されたメイ首相は、両党の支持率が接近している状況について「大事な世論調査はただひとつ、投票日当日に投票所で皆さんがどう選ぶかだけです」と決まり文句を繰り返した。解散総選挙の判断を後悔していないかと質問されたが、総選挙という「大胆」な手に打って出た自分の判断は正しかったと強調した。

労働党が政権を取る可能性について首相は、「もしジェレミー・コービンが首相官邸に入るなら、自由民主党とスコットランド国民党に支えられていないと無理ですよ」とあてこすった。

そうすれば、「閣議には足し算ができないダイアン・アボット(労働党影の内相)やマルクス主義者のジョン・マクドネル(労働党影の財務相)、この国をバラバラにしたい(スコットランド国民党党首の)ニコラ・スタージョン、それから国を欧州連合(EU)に逆戻りさせたい、つまり英国民の意志と正反対のことをやりたいティム・ファロン(自由民主党党首)が出席することになる」と首相は皮肉った。

コービン党首は、スコットランド国民党(SNP)など他の政党との「交渉」はしないと述べた。さらに、ドナルド・トランプ米大統領が気候変動に関する「パリ協定」の離脱を宣言したことを批判した。

労働党の選挙公約は「現実的な内容なのか、サンタクロースへのお願い手紙なのか」という質問に対しては、公約は単なる「欲しいものリスト」ではなく、「この国に投資すべき時だ」と意欲的な公約の内容を擁護した。

ブレグジット(英国のEU離脱)について姿勢を問いただされると、コービン氏は英国は「必ずしも」EU離脱で今より貧しくなると決まったわけではないと述べた。政権を取った場合のEUとの交渉については、労働党には交渉担当能力が十分にあり、すでに英国内のEU加盟国市民の権利保護法案を立案しているところだと述べた。自分が首相になれば、「EU加盟国として獲得してきた、単一市場へのアクセスと条件を確保するよう」努力すると強調した。

英国への核攻撃が切迫している時に先制核攻撃はするのかと繰り返し問いただされると、コービン氏は会場の1人に「自分のせいで数百万人を死なせたくない。あなたもそうだろう」と答えた。

コービン党首はこれまでも、潜水艦発射型戦略核ミサイル「トライデント」による核武装に公然と反対を表明してきた。ただし、労働党内の議論に敗れた後は、トライデント・システムの更新に合意している。

党首は核兵器のない世界のために努力すると述べ、核攻撃の危機に際しては「核拡散防止条約の義務を順守し、いかなる脅威もそこまで切迫するより先に必ず交渉や協議で対応できるよう、できる限りの力を尽くす」と答えた。

アイルランド共和軍(IRA)を「テロリストと思ったことがない」のはなぜかと質問されると、「北アイルランドだけでなく、それがどこだろうと誰だろと、あらゆるテロ行為を嫌悪してきた」と答えた。

メイ首相は、昨年の国民投票の前はEU残留を支持していたことを問いただされた。

「確かに当時は、EU残留のメリットがあると発言していた」と認めた上で、当時もたとえ離脱しても「空が落ちてくるわけではない」と述べていたと付け加えた。

首相はその上で、今では「民意を実現」し、ブレグジットを「確実に成功」させたいのだと強調した。

コービン党首との直接討論に応じないという批判については、「政治家が7人並んで言い争っても、それほど面白くないし、何かが分かるというものでもないと思う」と答えた。

保守党が、高齢者の在宅介護について自己負担額を引き上げようとしている点については、会場参加者が「一生働いて年金をためても、年を取ったら自分の介護のために全部持っていかれるとなったら、なんで働かなきゃいけないんです」と質問。首相はこれに、政府の改革は「公平」なものだと答えた。

首相はさらに、公的部門の昇給抑制(年率上限1%)についてベテラン看護師たちに、実質的な所得はどんどん減っていると指摘され、「自分たち看護師の給料が上がってるなどと言わないでもらいたい」と強く批判された。

首相はこうした批判に対して、「誰もが一気に欲しいものを手に入れられる魔法の金の木はない」と答え、公共部門の予算は「慎重に管理」しなくてはならないと述べた。

「魔法の金の木」という表現は、31日の7党討論会でも、首相の代わりに出席したアンバー・ラッド内相が使い、労働党のアボット影の内相は「魔法の金の木があるとでも思っているようだ」と批判していた。

精神疾患のため職業能力が適正に判定されず、就労機会を奪われたと泣きそうになりながら訴えた女性には、メイ首相は不当な扱いを受けたことには「言い訳のしようもない」と答え、職業能力判定の手続きは改善が必要で、精神疾患患者は「もっと早い段階で支援を提供しなくてはならない」と述べた。

(英語記事 Question Time: Corbyn and May face tough grilling