倉山満(憲政史家)

 おめでたいことである。秋篠宮眞子内親王のご婚約が明らかになった。お相手は民間人の小室圭さんだ。

 しかし、これに乗じてよからぬ企みを抱いている者が、いないか。さっそく、女性宮家創設を目論む者がいる。あえて、自分で書いていて不快な表現をする。世情語られている女性宮家が実現したら、こんな声が出てもおかしくない。

「佳子さん、口説こうぜ!」「愛子さん、落とそうぜ!」

 女性宮家創設を目論む人たちに聞きたい。それでいいのか?  ここで言う女性宮家とは何か。手っ取り早くたとえさせていただくと、「眞子内親王殿下には皇籍に御残りいただき、女性宮家の先鞭をつけていただきたい」との主張だ。そして、「眞子さんと小室さんの間に生まれた子供に皇族になっていただき、皇族の減少を防ごう」との意図である。
ブータンの民族衣装姿で弓技場を訪問された眞子さま=2017年6月3日、ティンプー(共同)
ブータンの民族衣装姿で弓技場を訪問された眞子さま=2017年6月3日、ティンプー(共同)
 それが許されるなら、妹君の「佳子さん、口説こうぜ!」と考える輩が出てきてもおかしくない。あるいは、皇室典範を改正してでも女帝として即位されることを熱望される向きもある、愛子内親王殿下に狙いをつける輩だっているかもしれない。私が皇室乗っ取りを企むよからぬ輩なら、それを考える。それを可能にする策なのだから。民進党の蓮舫代表がさっそく言い出した女性宮家創設とは、ざっくり言えばそういうことなのである。

 皇室の問題を考える際に重要な基準が一つある。「先例」である。皇室において、「新儀」は不吉である。たとえば、玉音放送だ。玉音放送という新儀は、敗戦と外国による国土占領という、これ以上ない不吉に際して行われた。古くは、大化の改新である。この際、皇極天皇は史上初の譲位を行った。神話の時代にも先例がない新儀である。これもまた、宮中における天皇の眼前での殺人事件という不吉が理由だった。

 もちろん、いかなる場合でも新儀が許されないわけではない。明治維新は「近代化」という新儀だらけの大変革を行った。もし先例にこだわって改革ができなかったら、日本国は地球上で文明国として生存できなかっただろう。必要な新儀であった。しかし、その際も明治政府の首脳は、「神武創業の精神」を持ち出した。初代天皇、神武天皇の先例に従うという意味である。新たな国づくりを目指す明治政府にとっての吉例は、神武天皇であった。ただし、このような先例の持ち出し方は例外中の例外であって、神話や伝説の時代にしか先例がないことは、吉例とはされない。

 歴史的存在である皇室は、伝統を貴ぶ。伝統を貴ぶとは、歴史から吉例を探すことである。また、先例とは不文法である。吉例を積み重ねることによって、皇室は守られてきた。

 そして、伝説の神武天皇の時代から一貫している不文法が男系継承である。この男系継承を女性排除と勘違いしている向きもあるようなので、皇室の歴史を検証することでいかなる不文法が存在するのかを明示したい。

 皇室における男系継承とは、「父親をたどれば必ず天皇に行きつく皇族だけに皇位の継承資格がある」ということである。今上陛下の父上は昭和天皇、その父上は大正天皇…とたどると江戸時代の光格天皇にたどりつく。その光格天皇は閑院宮家出身で、父親は典仁親王だ。父方の祖父は直仁親王、さらに父方の曽祖父は東山天皇である。このように、歴代天皇はすべて男系で継承されている。一回も例外はない。