小田部雄次(静岡福祉大教授)

 日本国憲法に明記される天皇の「ご公務」は、国事行為のみである。しかし、天皇は実際には国事行為以外にも多くのご公務をされている。宮中祭祀(さいし)をはじめ、稲刈りなど伝統文化の継承、戦没者追悼式や被災地訪問などの国内行幸、外国訪問や来日使節団の接遇などの国際親善、園遊会と、ご高齢の身にはかなりの負担である。
春の園遊会に臨まれる天皇、皇后両陛下と皇太子ご夫妻、秋篠宮ご夫妻と眞子さまをはじめ皇族方 =4月27日、東京・元赤坂の赤坂御苑(早坂洋祐撮影) 
春の園遊会に臨まれる天皇、皇后両陛下と皇太子ご夫妻、秋篠宮ご夫妻と眞子さまをはじめ皇族方 =4月27日、東京・元赤坂の赤坂御苑(早坂洋祐撮影) 
 天皇以外の皇族も、ご公務があり、皇太子の場合は献血運動推進全国大会、全国障害者スポーツ大会などに臨席される。秋篠宮家の眞子内親王も日本テニス協会名誉総裁などをつとめ、さきごろはブータンを公式訪問した。天皇、皇后はじめ多くの皇族方は、それぞれにご公務があり、そのつとめをすることで、日本の国際的地位の向上や国内的安定に貢献してきた。

 これらのご公務は、平素は報道されないので、一般には知られないことも多い。そのため、天皇は宮中でお祈りをしているだけだし、ほかの皇族方はなにもしていないと、誤解されることもある。

 しかし、歴史を遡(さかのぼ)れば、明治維新以後、天皇をはじめとする皇室は、国際親善につとめ、国内の諸地域の人々との交流につとめてきた。戦争で大きな打撃を受けて後も、世界の信頼を取り戻し、国民を励ますなど、復興の原動力となった。

 戦後70年、日本は世界の信頼を得て、国内も大きく発展してきた。その底力は多くの国民によるものだが、皇室がそれを支えてきたことも否定できない。

 このたび、秋篠宮家の眞子内親王の婚約が明らかになり、皇室と国民は新たな喜びに包まれた。一方、女性皇族は結婚すれば皇室を離れるため、それを惜しむ声も聞かれる。とりわけ、男性皇族の少ない現在の皇室にあっては、女性皇族が結婚で減っていくことで、ご公務はじめ多くの活動が停滞する可能性がある。

 そして国際親善や国民との交流がおろそかになり、ひいては社会の活力が低下する危険がある。ご公務を減らすのも一案だが、皇族数が大幅に減少してしまえば、最低限のご公務すら担えなくなる。そのため、女性皇族が結婚しても皇室にとどまっていただく、あるいはご公務を担える立場になっていただくなどの案が考えられている。眞子内親王の婚約が、そうした機運を加速させている。