2017年06月05日 20:48 公開

ロンドン中心部が襲われた3日夜の攻撃をめぐり、ロンドンのサディク・カーン市長が警備強化について「心配する理由はない」と発言したことをドナルド・トランプ米大統領が批判した問題で、市長のスタッフは4日、「もっと大事なことがある」と大統領の批判を一蹴した。トランプ氏はさらに5日にも、市長の説明は「情けない言い訳だ」とツイートで罵倒。これに対して英米両国で大統領を非難する声が上がっている。

7人が死亡し48人が負傷した襲撃の翌朝、カーン市長は「今後数日の間、市内に警官の数が増えるが、心配する理由はない」と発言した。これに対してトランプ氏は4日、警備強化についてのことだという文脈には触れず「テロ攻撃で少なくとも7人死亡48人負傷なのに、ロンドン市長は『心配する理由はない』だなんて言っている!」とツイートした

これに対して市長のスタッフは、「わざと」「文脈から外れて」意味を曲解した「トランプ氏に答えるよりも大事なこと」を、市長はやらなくてはならないのだと反論。カーン市長の報道官は「市長は警察や救急サービス、政府との連携に忙しい。この恐ろしく卑劣なテロ攻撃への対応を調整し、ロンドン市民とこの街を訪れる人たちにリーダーシップと安心をを提供するため」とコメントした。

しかしトランプ氏はさらに5日、「ロンドン市長サディク・カーンの情けない言い訳だ。『心配する理由はない』発言について大急ぎで説明しなきゃならなかった。主要メディアは一生懸命、市長の言葉を広めてるぞ!」とツイートした。

ロンドン橋近くの公園で5日夜に開かれた事件の追悼式に出席したカーン市長は、米大統領の批判についてBBCに質問され、「我々のコミュニティーを分断したい人たちがいる、分裂をあおることで活気づく人たちがいるのだと、認識しなくてはならない」と答えた。

「私はそうじゃない。私が知るロンドンもそうじゃない。そしてそれが誰だろと、ドナルド・トランプだろうとなんだろうと、自分たちのこのコミュニティーをそういう連中に分断させたりしない」

トランプ氏の一連のツイートには英米両国から、市長発言を歪めた無神経なものだと非難の声が多数上がっている。

英国では複数の政治家が、年内に予定されるトランプ氏の公式訪問の招待を撤回すべきだと主張している。野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、「サディク・カーンはロンドンとこの国を代表して、憎悪に立ち向かう発言をした。それこそがテロリストの勝利を阻止する方法だ。分断を促進するのではなく」とツイートした。野党・自由民主党のティム・ファロン党首は、「テリーザ・メイは公式訪問を中止しなくてはならない。この男は、国が内省し喪に服している時に、我々の国としての価値観を侮辱している」とツイートした。

カーン市長も、トランプ氏の再三の批判の後、「ロンドンの人たちと価値観を共有しない人を、レッドカーペットで歓迎するべきではないと思う」と公式訪問に反対した。

週末にかけてメイ首相は、カーン市長が「良くやっている」と述べるにとどまり、トランプ氏の発言を批判することは避けた。

英国では8日に総選挙が行われる。

トランプ氏の市長批判については、ニューヨークのビル・デブラジオ市長もカーン市長を擁護した。

デブラジオ市長はBBCのニック・ブライアント記者の質問に対して、カーン氏の対応は「まったく正しい」と答え、「ロンドンの人たちを守ろうとしている人を、なぜドナルド・トランプがおとしめようとしているのか、理解できない。まったく理屈に合わない」と述べた。

デブラジオ市長はさらにツイッターで、「サディク・カーン市長は、つらく苦しい時にロンドン市民を支えるため、素晴らしい働きをしている。トランプ大統領の攻撃は、受け入れがたい」と書いた。

全米1400以上の都市の市長からなる全米市長会議も、カーン市長を支持。4日に発表した声明で、「各地の市長が繰り返しそうするように、(カーン市長は)死と破壊のこの危機に際して事態を収め、恐怖を和らげ、ロンドンの人たちを安心させようと取り組んだ」と称えた。

トランプ氏による市長批判には英国の大勢が怒り、市長は市内の警官増加について「心配する理由はない」と言っていたのだとツイッターなどで次々と指摘した。

カーン市長は4日のインタビューでさらに、「我々も警察も最大限の安全を確認する必要がある」、「私はここが世界で最も安全な国際都市の一つだとあらためて自信を持っている」、「しかし最大限の安全確保のため対策を常に進化させ再考する」と話していた。

攻撃の後にトランプ氏は「ロンドンとイギリスに対して、アメリカができることはなんでもやる。一緒にいて支えている」とツイートした。しかしそのほかには、「ポリティカリー・コレクトはもうやめて、本格的に国民を守らなくては」とツイート。さらに、事件後に「銃について議論がないのに気付いてるか? ナイフとトラックを使ったからだ!」とも書いた。英国は厳しい銃規制を導入している国の一つ。

一連のツイートの後、トランプ氏は前日に引き続き、バージニア州のトランプ・ナショナル・ゴルフ・クラブを訪れた。

カーン市長とトランプ氏は、過去にも何度か衝突している。

昨年5月にロンドン初のムスリム(イスラム教徒)市長となったカーン氏は、大統領候補のトランプ氏がイスラム教徒の入国禁止を表明したことを批判した。

自分が米国を訪問できなくなると発言した市長にトランプ氏が「例外にする」と答えると、市長は「自分がどうなるではなく、友人や家族や世界中の人たちの問題だ」と反論した。

カーン市長はさらに、トランプ氏がイスラム教について「無知」で、米英両国の「安全を損なう」と発言。これに対してトランプ氏は「知能テストをやろう」と反発し、「僕を知らないし会ったこともないのに(中略)何を言われたかは忘れないでおく」と不快感をあらわにしていた。

(英語記事 London attacks: Mayor Sadiq Khan dismisses Trump criticism