2017年06月09日 9:04 公開

米連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー前長官は8日、昨年の大統領選へのロシア介入疑惑を調べる上院情報委員会の公聴会で宣誓証言し、ドナルド・トランプ政権が自分とFBIについて嘘をついたと述べた。

コーミー前長官は証言冒頭で「FBIは正直で、FBIは強い。そしてFBIは常に独立を保つ」と強調。その上で、政権が明らかにした自分の解任理由が二転三転したため、「混乱し懸念した」と述べた。

自分の「まずい」指揮下でFBIが「大混乱」に陥っていた政権が説明したのは、「自分だけでなく何よりFBIの評判をおとしめた」と批判し、政権の説明は「明白で単純に言って嘘で、FBIスタッフがあのようなことを聞かされたのを残念に思う」と述べた。

2時間40分に及んだ公聴会でコーミー氏はさらに、自分が解任されたのは「ロシアに関する捜査の方法を変更するため」だろうと話した。

コーミー氏は、トランプ大統領と一対一で対面した場で、マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に対する捜査を打ち切るよう指示されたと感じたほか、大統領への忠誠を要求されたと述べた。

トランプ大統領の個人的な法務顧問マーク・カソウィッツ弁護士は声明で、大統領がロシア疑惑をめぐる捜査対象になっていないと、コーミー氏の証言によって「ついに公の場で確認された」とコメント。またトランプ氏は、フリン氏への捜査中止をを求めたり、忠誠を要求したりしていないと表明した。

コーミー氏は証言を事前に書面で準備し、上院情報委は7日にこれを公表。質疑はその内容を基に進んだ。

前長官はロシアが大統領選に介入したことについて何の疑いもなく、「疑いの余地はまったくない」と強調した。

一方で、大統領がロシア疑惑捜査をやめさせようとしたことはあるかという質問には、「私が知る限りありません」と答えた。

議員たちの質問に答えて前長官は、ホワイトハウスの大統領執務室にいた際に、大統領がジェフ・セッションズ司法長官とジャレッド・クシュナー顧問に退席させて人払いした時のことを説明した。

執務室に大統領と二人きりになり、「何かが起きようとしているので、集中して注意する必要があると分かった」とコーミー氏は述べ、大統領が司法長官をわざわざ退席させて自分と一対一になったのは「非常に気がかりな展開だった」と繰り返した。

「我々の会談の性質について(大統領が)嘘をつくかもしれないと、本当に心配した」とコーミー氏は発言。トランプ氏に繰り返し一対一の話し合いを求められ、そのたびに詳細な記録をつけていたのは、「自分やFBIを守るために必要になるかもしれないと思った」からだと説明した。

司法副長官やFBI長官として仕えたジョージ・W・ブッシュ元大統領やバラク・オバマ前大統領との会話については、記録する必要を感じたことはなかったとも述べた。

ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は、「大統領は嘘つきではないと断言できる」とコーミー氏に反論した。

フリン前大統領補佐官への捜査打ち切りを指示されたと感じた点について、大統領の行為は司法妨害にあたるかと尋ねられると、コーミー氏は「自分はそれに答える立場にない」と述べ、ロバート・ムラー特別検察官が指揮する捜査が判断することだと繰り返した。

また自分の解任後に、ホワイトハウスの説明を懸念した前長官は、大統領が自分たちの会話を録音していたかもしれないと大統領のツイートで知り、「頼むからテープがあってくれ」と思ったという。さらに、録音が存在するならば自分の記録の裏付けになるはずだと思い、友人のコロンビア大教授を通じて、自分の記録をマスコミに提供したと説明。そうすることによって、特別検察官の任命を加速化させようとしたと述べた。

トランプ氏は5月12日、「ジェイムズ・コーミーは、マスコミにリークしはじめる前に、僕との会話の『テープ』がないよう願っていた方がいい」とツイートした。

録音の存在について、ホワイトハウスは認めも否定もしていない。

コーミー氏は「大統領はもちろん、私を録音したのかどうか承知しているはずで、もし録音しなかったとしても私の気持ちは傷ついたりしない。録音は全部公表してください。私はそれでいい」と公聴会で述べた。

こうした流れのなかで5月17日、コーミー氏の前任のFBI長官だったロバート・ムラー氏が特別検察官に任命され、ロシアの大統領選介入とトランプ陣営の結託の疑惑を捜査することになった。

コーミー氏は、ムラー元FBI長官は「確実に」大統領の捜査妨害疑惑も調べているだろうと証言した。

自分たちの会話記録を解任後のコーミー氏が米紙ニューヨーク・タイムズなどに提供したことについて、トランプ氏は政府関係者が「積極的にこの政権の足を引っ張ろうとしている」ことの証拠だと強く非難していた。


与野党の反応は

共和党幹部のポール・ライアン下院議長は、コーミー氏の証言を受けて、「(大統領は)政府に入って間もないので、やりながら学んでいるのだと思う」と報道陣に述べた。「これが容認できる言い訳だと言っているわけではない。単に、自分がそう思うというだけだ」。

共和党幹部のリンジー・グレアム上院議員はBBCに対して、「大統領の行動が不適切で、コーミーを困らせて、無礼でがさつで乱暴だからと、大統領を有罪にしたいなら、それはそちらの勝ちだろう。しかし米国民は、自分たちの生活を助けてもらいたいから、がさつな乱暴者を選んだのだ」と述べた。

民主党若手のクリス・マーフィー上院議員は、「ジム・コーミーの今日の証言は非常に重要だ」、「壁がどんどん迫ってきている感じだ」と話した。

(英語記事 Comey: Trump White House 'lied' about the FBI