小浜逸郎(評論家)
22
こはま・いつお 昭和22(1947)年、横浜市に生まれる。横浜国立大学工学部卒業。思想、教育論など幅広く批評活動を展開。国士舘大学客員教授。著書に『弱者とは誰か』(PHP新書)、『日本の七大思想家』(幻冬舎新書)など多数。



 ここ2、3カ月の間、「在日特権を許さない市民の会」(略称「在特会」)のヘイト・スピーチなるものがずいぶんと話題になっています。この盛り上がりの主なきっかけは二つあるようです。一つは、朝日・毎日・東京・中日などの反日・反安倍政権メディアが、山谷えり子国家公安委員会委員長と元・在特会メンバーとのツー・ショットをネタに、保守政権と「ヘイト・スピーチをしてきた差別主義・排外主義的団体」との癒着を表すものとしてさかんに攻撃してきたこと、もう一つは、橋下徹大阪市長と在特会会長・桜井誠氏との会談で双方罵倒のやり合いに終始し、10分足らずで決裂してしまったこと。

 これらに関する私の第一印象を述べます。前者について。攻撃の仕方が単に閣僚と「ヘイト・スピーチ差別主義団体」とのツー・ショットという現象だけをとらえた非難に集中していて、そもそも在特会がどんな主張をしてきたのか、その正当性のいかんを問うような記事がまったく見当たらない点がおかしい。またヘイト・スピーチが刺激的・攻撃的であるというだけの理由で「悪」と決めつけてよいものかどうかも気になるところです。

 後者について。興奮して吠える桜井氏も桜井氏ですが、それ以上に大都市の市長という重要な公職身分にありながら、いつもの橋下氏の品格のなさを再確認する思いでした。またそれとは別に、橋下氏が「大阪でそういうことやるな、国会議員に言え」と何度も繰り返していたのが印象的でした。なるほど大阪は全国で突出して在日韓国・朝鮮人が多い地域ですから、市長としては「過激な」仕方で在日特権問題を露出させられることに伴う混乱を政治的に恐れたのでしょう。しかし彼の挑発的な性格がかえって裏目に出たようです。なお在日特権問題についての彼の考え方の是非については後に触れます。

 さて一見センセーショナルなだけにみえるこれらの事件の背景には、じつはたいへん複雑で厄介な問題が存在しています。本稿では、これをできるだけ思想的に掘り下げてみることにしましょう。

在日特権という厳然たる事実


 まず私が知りえた限りでは、在日特権は存在します。その最も顕著なものは、生活保護に関する優遇措置です。一番新しいところで、2014年の厚労省の調査によると、生活保護率は全体平均が千世帯のうち17世帯であるのに対して、在日韓国・朝鮮人は142世帯という突出した数字になっているそうです。約8・4倍ですね。もちろんこの資金の源は日本国民の税金です。また国民年金加入者で40年間保険料を納めた場合の老齢基礎年金は月額6万6千円ですが、65歳の生活保護受給額は月額12万円であり、これがそのまま永住外国人にも適用されるわけですから、永住外国人の無年金者が日本人の国民年金加入者よりも多額の受給を受けるという逆転現象も起きています。

 少しさかのぼって2008年時点では、在日韓国・朝鮮人のうち生活保護を受けている人は3・9%、これは日本人1・2%の3・25倍に相当します。なお在日韓国・朝鮮人は1991年に制定された入管特例法によって特別永住者と呼ばれるようになりました。そこで、同じ2008年時点で生活保護を受けている人の割合を、一般永住者(外国人)のそれと比較してみますと、特別永住者が一般永住者の約4・46倍と計算されます。

 2014年の調査と2008年の調査で数字が大きく異なっているのは、前者が世帯単位、後者が個人単位であることが主たる理由と考えられます。生活保護は世帯単位で支給されますが、世帯単位のほうが倍数が大きくなるということは、在日の人たちが世帯分離の操作(たとえば偽装離婚など)を日本人よりも多く行って、よりたくさんの給付を受けられるようにしている可能性が考えられます。ちなみに、だいぶ古い資料ですが、1995年のSSM調査研究会による社会階層と社会移動全国調査によると、在日韓国・朝鮮人の方が日本人よりも収入が高くなっているそうです。

 次に、在日韓国・朝鮮人は、通名使用が認められているので、いくつもの通名を使用することが可能であり、これを犯罪に悪用すれば捜査の妨害をしやすいという点も見逃せません。現に過去にそのような例がいくつもあったそうです。また、他の外国人ならば犯罪を犯したらどんな軽犯罪でも本国に強制送還されるのに、在日韓国・朝鮮人は、入管特例法によって、内乱罪のような例外を除いて、強制送還されない規定になっています。これは一般の外国人と比較しての特権というべきで、要するに日本人と同等の扱いを受けるということでしょう。さらに、同じく他の外国人と比較しての特権ですが、出入国に当たっては日本人用のゲートを使うことができるので、めんどうなチェックを受けないで済みます。法的には外国人でありながら外国人扱いされないわけですね。このことは、安全保障上の問題点を孕みますし、また密輸などの犯罪にも利用することができます。