安倍宏行(Japan In-depth編集長)

 「都民ファーストの会」とはなんなのか。生まれたばかりの赤ん坊はどんな子供になるかすらわからない。つまり、誕生したてのものに、ああでもないこうでもないと言ったところでどうにもならないし、たいした意味もない。

 かつて、そう、4半世紀くらい前、私は日本新党の番記者をやっていた。当時私はフジテレビに転職して2年目、政治部の経験はなく、経済官庁を担当していた。なぜ、日本新党番なぞやっていたかって? それは、どこの馬の骨ともわからない新党に政治部の精鋭記者を配属する余裕が社にはなかったということにつきる。それが証拠に、他の新聞記者も科学部や文化部から投入されていたのだ。みな政治家の顔がわからないものだから、「おい、今、日本新党の事務所に入ったのは誰だ?」などと皆右往左往したものだ。かの小池百合子東京都知事も、細川護煕代表の半歩後を歩いていたのを今でも思い出す。

 そして1993年7月の衆議院総選挙が終わり、35人もの当選者を出した日本新党だったが、当選者のポスターがずらっと貼られている事務所の壁を前にして、細川代表がこうポロリとつぶやいたものだ。いわく、「この方は存じあげないなぁ。しかし風っていうのは怖いものですね。こうした方も受かるんですから…」
1994年6月、会見を行う小池百合子衆院議員と日本新党の細川護熙代表
1994年6月、会見を行う小池百合子衆院議員と日本新党の細川護熙代表
 オイオイ、と心の中でツッコミつつ、いや、党首だってあきれるくらいなんだから、やはり政治の世界の風ってのは、ものすごいパワーを秘めているんだな、と妙に得心したものだった。

 それ以来、風によって政局が大きく動く場面を幾度となく目の当たりにしてきた。2005年の小泉郵政選挙の時の風もすごかったし、去年の都知事戦でも明らかに風は吹いた。告示日に無風でも、選挙日が近づくにつれ徐々に風がその強さを増していく。そして最終日を迎え、最後の街頭演説を取り囲む有権者の熱気、パワーがその候補者の当落を決めるのだ。だから1カ月前の当落予想はたいした意味を持たない。なぜならそれは予想のための予想に過ぎないからだ。去年の都知事選のときだった。ある政治評論家は自民党の組織は盤石だから増田寛也候補が絶対勝つ、と自信満々で予測しておられた。