佐々木信夫(中央大大学院教授)

 ファッションセンスも抜群、テレビ映りもよく、言葉の言い回しも巧み。東京都知事、小池百合子氏をテレビで見ている人はそう感じているらしい。実は「都民ファーストの会」という地域政党も小池氏そのものではないか。飾り方も上手いし言い回しもなかなかだ。ただ、中身は何なのか分からない。都民ファースト=小池百合子、この図式で始まった小池劇場の第二幕、それが都議選だが、いったいどうなるのか。

 加計学園問題が都議選に影を落としている。都政で小池百合子氏が進める「見える化」改革が国政の隠ぺい体質を浮き彫りにしている形だ。「そんな資料はない」「首相の指示はない」と総理、官房長官が答弁する傍らで、官僚の前文科次官が「資料はある」「天の声もあった」と場外メディアで真っ向から反対のことを言う。事実はひとつのはず、いずれかが嘘をついている。ただ、政権側が再調査も証人喚問もことごとく拒否し続けていたら、国民に隠ぺい体質と映ったのか、安倍政権の支持率が急落した。そこで、あわてて再調査すると発表する顛末だ。

 この動きを逆手に、「オッサン政治」「忖度政治」と小池氏は街頭でボルテージを上げている。「いつ、どこで、誰が」の犯人探しで「都政の見える化」を図ってきた自信からか、国の「閉じた体質」を徹底的に批判、自民政治の闇を際立たせる戦略だ。都民ファーストと言いながらメディアファースト、選挙ファーストへ傾いているが、そこは横に置いといて、都政の見える化に対し国政の隠ぺい体質を際立て自民を責め立てるのが小池氏だ。

 もとより、自民も黙っていない。この約1年に及ぶ小池都政、「問題提起はよいが、問題解決ができない」、「決められない知事」批判を強める。この両者、どちらの主張も一面の真理だが、いずれこの都議選は「攻める小池」VS「守る自民」の攻防の様相にある。
「希望の塾」の第1回都議選対策講座で、あいさつする小池百合子知事=2017年1月、東京都千代田区
「希望の塾」の第1回都議選対策講座で、あいさつする小池百合子知事=2017年1月、東京都千代田区
 ふつうの地方選と違い、首都東京の都議選には必ず売り物が出る。今回は「都民ファーストの会」という売り物。昨年夏の都知事就任後、小池ブームのなか小池塾ができ、小池新党ができた。今回、その小池新党から48名(6月1日時点)もの大人数が立つ。自民60名、共産38名、民進24名と真っ向勝負の形だが、本当に中身のある政党なのか。

 包装紙に包んだままだと、中身がどんなものか分からない。お中元だとうれしく受け取るが、果たしてどんな代物か、味はどうか、もらう時ドキドキする。今の段階で、“都民ファースト”という小池新党は、包装紙に包まれたお中元のようなものではないか。この地域政党は何をやりたいか、どんなメンバーか、誰も食べたことがないから分からない。ただ、小池さんが「おいしいですよ!おいしいですよ!」と毎日セールスに回っているから、そうかなと思う人も結構いるようだ。メディア戦術に長けた小池氏らしい戦略だ。

 もっとも政治とカネで都知事が相次ぎ辞職した後だけに、「何かを変えて欲しい」という空気が充満していることは事実。その空気(風)を満帆に受けて小池丸は航行中だ。世論調査で「都議会第1党をも伺う勢い!」という見出も散見するが、果たしてホントなのか。

 公約の「東京大改革」という大仰な表現とは裏腹に、やっていることは意外に細かい。豊洲移転、五輪施設の見直しなど「負の遺産」とされるこれまでの事案を掘り起こし、そこでのムダ遣い、隠し事、不透明さを事細かく指摘する。「いつ、どこで、誰が決めたか」式の犯人探しがメイン。自民党都連をブラックボックス、自民長老を都議会のドン、石原都政を無責任体制と呼んできた。