岩渕美克(日本大学法学部教授)

 6月1日、小池百合子東京都知事は、自由民主党を離党し、「都民ファーストの会」代表に就任することを表明した。築地市場の豊洲移転問題、東京五輪・パラリンピックの会場や運営費の問題など、「決められない都知事」としての批判をかわす目的もあるのだろう。小池氏は自民党が決められないので自ら離党したということをアピールした上で、都議会選挙で「自民党との対立の構図」を作ることでメディアに取り上げられることを狙ったものであろう。
都議会自民党の議員にあいさつする小池百合子都知事=6月2日、都庁(宮川浩和撮影)
都議会自民党の議員にあいさつする小池百合子都知事=6月2日、都庁(宮川浩和撮影)
 まず自民党からの離党は、対立の構図をより分かりやすくしたことで「腹を決めて」都議選に臨む決意を示そうとしたもので、実際「選挙モード」突入に成功した。しかし、そもそも都知事選に出馬した際に「進退伺」を提出したことに、違和感を覚えざるを得なかった。私の解釈では、進退伺は業務上のミスなどがあったとき、上司に自らの進退を委ねて判断を仰ぐ場合に提出するものであると思う。したがって、小池氏には業務上、あるいは政治家としてのミスがあったということになる。

 自民党の公認を得ないで都知事選に立候補したことが、自民党に対して責任を取らなくてはならないミスであったと思われるが、小池氏は、信念に基づき党の意向を無視して出馬したのではなかったのか。まして自民党の候補者と戦うことになったのであるから、離党届をそのときに出すべきである。政治家のスキャンダルや法的な問題などが起こった場合に良く聞かれる言葉だが、「政治家の出処進退は自らが決める」のが原則だから、やはり遅い感じがする。その後も小池氏は都議会自民党との対立を鮮明にしてきたのであるから、早く決断すべきであった。ただし、都議会自民党とは対立しても、自民党本部とは対立したくないという分かりづらい状況が解消されたことは、都民にとっては有益であろう。

 代表就任に関しては、野田数(かずさ)代表(現幹事長)のスキャンダルや、都知事の支持率と都民ファーストの会の支持率がリンクしていない各種調査の結果から、「小池人気」に比べて都民ファーストの会の人気が盛り上がってこないことに危機感を感じたのであろう。このままでは、選挙協力を表明している公明党と連立しても過半数に届かない可能性もある。少なくとも第一党の座は確保したいというもくろみもあるだろうから、そのためのてこ入れの意味合いが強いと思われる。しかし、そもそも代表が野田氏であったことをどれだけの都民が認識していたであろうか。代表になろうがなるまいが、都民ファーストの会は小池氏の政党であることは自明の理であり、このことのインパクトはあまり大きくはないと思われる。