2017年06月15日 14:56 公開

レイチェル・シュレアー、ジャック・グッドマン BBCニュース

ロンドン西部の公営住宅で14日未明、24階建て127戸の「グレンフェル・タワー」から出火し、大勢が死傷する大火災となった。管理側は住民に、自室や直近の廊下などで出火したのでなければ、火事の際は室内に留まるよう指示していた。これはなぜなのか。

グレンフェル・タワー内に掲示されていた火災時行動マニュアルは、自室で発生した、もしくは自室に影響を与えている火事でなければ、室内に留まるよう住民に勧告している。住民へのニュースレターでは、「別段の指示がない限り、長年の『その場にいて』方針が適用されます。これはつまり、自室や自室外の廊下で出火したのでない限り、自室内にいるべきだという意味です」と書いている。

これは大型集合住宅において比較的スタンダードな勧告だ。

ロンドン消防局は一般的な火災対策として、集合住宅で火災が発生した場合、炎や煙に直接影響を受けていない箇所の人たちは、自室に留まった方が「安全な場合が多い」と説明している。

元消防士で防火対策専門家のエルフィン・エドワーズさんは、「自室に留まる」方針は、火事に直接影響を受けない住民が不要に避難して通路をふさがないようにするためだと話す。

大事なポイントとなるのは、炎の広がり方だ。英国の防火対策の基本は、鎮圧可能な規模の火事を前提としている。高層集合住宅は通常、たとえ1カ所で出火しても建物全体には広がらないよう設計されている。個別の住宅はそれぞれ独立して、延焼を防ぐように設計されているはずだ。

しかしグレンフェル・タワー火災の場合、炎が瞬く間に建物全体に燃え広がった。その速度は前例がないとエドワーズさんは言う。

建築物の防災設備点検を専門とするジェフ・ウィルキンソンさんはBBCに対して、煙が避難ルートに侵入して広がった様子が「何より気がかりな」ことのひとつだと話した。ウィルキンソンさんはさらに、タワー棟の警報システムが、通常想定されるものとは異なっていたようだと指摘する。

「こういう建物は、全員が避難することを想定していない。非常階段が一つしかない構造では、火は個別の居宅内で鎮圧することが前提となっている。住民全員が一斉に避難しなくても良いようにするためだ。消防隊がやってきて状況を把握し、どの階から先に避難すべきか判断し、住民はその避難誘導に従うというシナリオが想定されている」

防火対策の専門家、グレアム・フィールドハウスさんは、「室内に留まる」方針があるからといって、どのような場合にも住民は室内に残らなくてはならないわけではないと話す。

「室内残留方針の是非と、住民がどれだけ方針を理解しているのかにもよる。もし炎や煙の影響を受けているなら、早く出た方がいい」

たとえばエセックス地方のハーロウ行政区は、「迷うなら、外へ」と行動指針を出している。

各地の行政区を代表する地方政府協会も、2012年の行動マニュアルで「迷ったら外へ」を勧告。「室内残留」方針があるからといって、「身の危険を感じる」人たちが外に出るのを防ぐものではないと説明している。

恋人と幼い娘の3人でグレンフェル・タワーの8階に住んでいたマイケル・パラマシーバンさんは、外に出るなという勧告を無視したと話す。

「アパートに残ってたら、3人とも死んでいた」

室内に留まるようにという勧告は、これまでにも疑問視されてきた。

2009年にはロンドン南東部の公営高層住宅「ラカナル・ハウス」(14階建て98戸)で火事があり、6人が死亡した。その後の火災調査で、当時のケン・ナイト消防総監は、火勢の広がり方が異例だったと指摘。室内に留まる原則が今でも有効なのか確認するには、火の広がり方を十分に理解する必要があると報告した。

今回のグレンフェル・タワー火災によって、避難方法に関するその疑問があらためて浮上するのかもしれない。

(英語記事 London fire: Why are people told to 'stay put'?