新聞各紙は世論調査を実施し、衆院選の序盤情勢の調査結果を12月4日、紙面で報じた。「自民、300議席超す勢い 民主伸び悩み、維新不振」(朝日)、「自民300議席超勢い 海江田・菅氏苦戦 民主70議席台も」(産経)と、どこも似たような“自民圧勝、野党苦戦”となった。

 実際、各選挙区を取材して歩いても、野党候補が勢いづいているところは皆無に等しい。それどころか、自民党候補でさえも、演説で通行人が立ち止まり、拍手する姿はなかなか見られない。立ち止まって拍手するのは、動員をかけた関係者で、いわゆる“仕込み”だ。

 つまり、自民党圧勝は熱気に包まれたものではなく、低投票率のなか早くから地盤固めをしっかりしてきた自民党が抜きん出た格好だ。

 第三極は沈没し、民主党は伸び悩んでいる。政党政治としてブレていないのは結局、共産党だけ(だからといって、政権担当能力があるというわけではない)というのが透けて見えるのが分かる。

 政権交代を可能とした小選挙区制度。確かに、過去に政権交代は起きたが、非自民党政権は長くは続かず、今回の衆院選でも「民主党はノー」という“民意”が突きつけられそうだ。現在の自民党に反対したいのに、投票先がない、野党で受け皿がない。そんな声をよく耳にする。本来、片方がダメならもう片方に任せようとなるのが、2大政党制の持つ意味だからだ。つまりいまなお、日本には自民党に代わる政権担当能力を持つ政党がないということに他ならない。だとしたら、どのような政党であれば、2大政党制が安定して続けられるのだろうか。

 2大政党制に関しては、たとえば外交・防衛のスタンス、経済のスタンスなどで振り分けられる。米国の共和党と民主党は、前者が小さな政府、後者が大きな政府(ざっくりとした分け方ですが)を求めている。はっきりした差異が2大政党制には必要で、現在の日本の与野党ではこの差が分かりづらい。それが2大政党制を困難にしている要因の一つだろう。

 たとえば、現在の野党を見てみれば分かりやすい。次世代の党は元自民党の石原慎太郎氏、平沼赳夫氏が先頭で引っ張っているが、石原氏は元青嵐会、平沼氏は元師水会で、いずれもタカ派路線。右寄りの議員が多く、安倍首相に近い。

 維新の党は、新自由主義を目指し、地方分権、霞が関改革、議員定数削減などを掲げており、経済政策の面で見れば、より強烈なアベノミクス推進だ。
 一方、民主党は複雑だ。リベラル保守の色合いを持つものの、ご存知のとおり支持母体に連合があり、旧社会党系の議員もいることから左寄りの政策も出たり、かといえば、松下政経塾出身者による新自由主義寄りの考えを打ち出すこともある。

 生活の党、社民党はイデオロギーで異なるものの、政策面では左寄りで似かよっている。

 つまり、左寄りの政策か、極端に右に振れているか、それともどっちつかずかが、現在の野党だ。これでは、非自民党の受け皿が見当たらないという有権者の悩みは当然とも言えるだろう。

 つまり、リベラル保守が決定的に欠けている。この解決の道は、「派閥の政党化」がカギではないか。これまでの歴史を振り返ってみれば、自民党の派閥による政権たらい回しだった。非自民党政権を樹立したのも、小沢一郎という元自民党の“剛腕”あってのことだった。つまり、自民党で経験した人が中心となって、違った政党で競い合っていく。

 ことさら自民党が優れているということではない。しかし、政権を担当するということは、正論を言う、与党を追及するといったことに腐心する野党では計り知れない調整力と先見性、広い視野と冷徹さが求められる。その学習を、階段を一段ずつ上るようにさせていたのが、かつての自民党の派閥だった。

 現在の安倍晋三首相は清和会出身。安倍首相の祖父、岸信介元首相の岸派の流れを汲むもので、親米を基調としながら自主憲法制定を唱え、再軍備に積極的であるなどタカ派色が強い。

 一方、リベラル色が強く、政策通を自負しているのが宏池会だ。吉田茂元首相をルーツにし、池田勇人元首相が立ち上げた派閥で、その後も大平正芳、鈴木善幸、宮澤喜一が首相の座に就いた名門派閥である。

 タカ派とハト派ーー。憲法改正派と九条堅持派は、米国の共和党と民主党のような小さな政府と大きな政府にも分けられる。保守という点では変わりないものの、双方の“思想”には大きな隔たりがある。

 現在の自民党内を見れば、宏池会のほか、田中角栄元首相の木曜クラブを前身とした平成研、三木武夫・河本敏夫の流れを汲み“党内左派”と呼ばれたこともあった番町研など比較的ハト派派閥と、清和会のほかには麻生太郎元首相が会長を務める為公会、石原伸晃前環境相が会長の近未来政治研などがタカ派色の強いグループとされる。

 この自民党の派閥が分かれることで、野党もどちらかに加わり、徐々に2大政党に収斂していくことが現実的で一番の近道ではないか。いずれにしても、このままでは閉塞感と失望感だけの政治になってしまう。政治家には、一刻も早く2大政党制への道程を突き進んでもらいたい。そう切に願っている。