海野素央(明治大学教授、心理学博士)

 今回のテーマは「セッションズ氏の証言」です。2017年6月13日、米上院情報特別委員会でジェフ・セッションズ司法長官は、ロシア政府とトランプ陣営が共謀していたのではないかという「ロシアゲート疑惑」に関して宣誓証言を行いました。本稿では、公聴会における同長官の議論の仕方及び表情や声のトーンといった非言語コミュニケーションに焦点を当てます。その上で、誰が公聴会の敗者かについて考えてみます。
米上院情報特別委員会で証言するセッションズ司法長官=6月13日、ワシントン(ロイター=共同)
米上院情報特別委員会で証言するセッションズ司法長官=6月13日、ワシントン(ロイター=共同)
 公聴会でマーティン・ハインリッチ上院議員(民主党・ネバダ州)は、セッションズ司法長官がロシアゲート疑惑の捜査に関与しないと表明した時、トランプ大統領は不満を漏らしたか質問を投げかけました。一部の米メディアは同大統領がロシアゲート疑惑から身を引くと発表した同長官に怒り、両氏の関係が不和になったと報道しています。同長官は、同大統領との私的な会話内容は明らかにしないと述べて回答を拒否しました。

 セッションズ司法長官はその主たる理由に「司法省の伝統」を挙げて、長年にわたる同省の取り決めであると説明したのです。さらに、同長官は野党・民主党議員の質問に対して「思い出せない」と言い、トランプ大統領を疑惑から守りました。今回の公聴会における同長官のパフォーマンスは、翌日14日に71歳の誕生日を迎える同大統領へのプレゼントになりました。

 元米上院議員で軍事委員会及び司法委員会等に所属していたセッションズ司法長官は、公聴会の冒頭、上院情報特別委員会のメンバーに対して「同僚」という言葉を用いて同情を買おうとします。民主党上院議員はその言葉に乗りませんでした。

 まず、ロン・ワイデン上院議員(民主党・オレゴン州)がロシアゲート疑惑に対する捜査妨害は受容できないと主張しました。セッションズ司法長官がロシアゲート疑惑に対して不関与を表明したのにもかかわらず、身を引いていないと同議員は議論したのです。これに対して同長官は怒った目と表情を浮かべながら、声のトーンを高めて「不愉快だ」と強い口調で反論したのです。

 次に、元検察官のカメイラ・ハリス上院議員(民主党・カリフォルニア州)です。ハリス上院議員は、「選挙期間中、ロシア人のビジネスマンと会話をしましたか」等の質問を矢継ぎ早にセッションズ司法長官に浴びせたのです。

 しかも、ハリス上院議員はセッションズ長官が回答中に介入して、次の質問に移るのです。10分の持ち時間を与えられた同議員は、同長官から核心を引き出せないと判断すると、回答の途中でも即座に次の質問に移ったのです。このスキルは討論会の尋問で使用します。