前嶋和弘(上智大学総合グローバル学部教授)

 トランプ政権とロシアの関係をめぐる「ロシアゲート疑惑」が全米を揺るがしている。事実なら昨年の大統領選の正統性すら揺るがしてしまうという意味で、米国の歴史の中でも最大の疑獄に発展する可能性すらある。トランプ大統領のことを良く思っていない行政府内の職員からリークも連日続いている。それだけでも異常だが、ただ現時点では、あくまでもそのリーク情報に基づいたメディア主導の疑惑であった。
1月22日、大統領就任直後にホワイトハウスで当時のコミー連邦捜査局(FBI)長官(右)と握手するトランプ氏(UPI=共同)
1月22日、大統領就任直後にホワイトハウスで当時のコミー連邦捜査局(FBI)長官(右)と握手するトランプ氏(UPI=共同)
 メディア主導の中で、ようやくリアルな疑惑解明が動き始めている。6月8日のコミー前連邦捜査局(FBI)長官証言がそれだ。証言では、報道されていた一連の疑惑のうち、司法妨害に関係する疑惑の一端が初めて公になったのが、ロシアとの不適切な接触や選挙への介入疑惑など、コミー氏自身の口で肉付けし、それなりに生々しく語ったことは米国民にインパクトを与えたとみていいだろう。

 ロシアとの関係が疑われているフリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の捜査について、2人だけの席での「フリンはいいやつだ。ほっといてやってくれ」という大統領のささやきは、コミー氏にとっては捜査中止の指令に他ならなかった。トランプ氏に否定的なリベラル派の多くは「コミー証言は真実。トランプ氏が言うような作り話どころではない」と怒りをにじませる。

 それでもただ、コミー証言は過去の報道内容を大きく超えるようなものではかった。トランプ氏が捜査中止を要望しても、実際に捜査は続いたため、これだけで司法妨害は立証するのはやや難しい。トランプ氏を支持する保守層は「司法妨害でないことを確認した」と胸をなで下ろした。いってみれば、引き分けの結果となった。