ただ、ロシアゲートという米国史の中でも極めて深刻で重大な疑惑の全体像はあまりにも大きい。コミー氏の証言はあくまでも大きなパズルのごく小さなピースでしかなく、全容解明の手始めに過ぎないのだ。

 ロシアゲート疑惑は複数のものであり、もし事実だとすると最も深刻な疑惑となるのが昨年の大統領選に対するロシアの介入疑惑である。民主党候補だったヒラリー・クリントン元国務長官の選挙戦を妨害しようと、民主党全国委員会などにロシアがサイバー攻撃を行ったり、クリントン氏を貶めるためのフェイクニュースを流したのではないかという疑惑である。この介入の際に、トランプ陣営が組織的に共謀したという事実がポイントとなる。もし、金銭の授受などの贈賄や、トランプ氏がロシアに何らかの弱みを握られ、恐喝されたような事実も今後明らかになるかもしれない。

 2つ目の疑惑は、一連のロシアの選挙介入の捜査をしてきたコミー氏を辞めさせてしまったという、前述の捜査妨害(司法妨害)の疑惑である。これが今回のコミー証言の核心部分だった。

 3つ目は、トランプ氏が5月にロシアのラブロフ外相とホワイトハウスで会った際、同盟国のイスラエルから得た秘密情報を同外相に渡してしまったという機密漏えい疑惑である。内容はイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)によるラップトップ型パソコンを使った航空機テロ計画の情報だったとされているが、これも本当なら「同盟国の情報を簡単に漏らすような国」というレッテルが張られ、同盟国からの信頼が薄れ、対テロ作戦を含む外交が大きく揺らいでしまう。

 4つ目はまだオバマ政権が続いている大統領就任前にトランプ氏周辺がロシアと接触し、何らかの取引を行ったのではないかという二重外交疑惑である。

 最初の2つに比べると、3、4つ目はやや深刻さは下がるものの、それでもロシアゲート疑惑の闇は非常に深い。

 今後の疑惑解明は、議会と特別検察官に任命されたモラー元FBI長官の2つのルートで行われる。このうち、特にトランプ氏が恐れているのは、モラー特別検察官による捜査であろう。トランプ氏が疑惑を起訴すべきかを決める大陪審に召喚され、そこで偽証すれば、過去にクリントン元大統領が不倫問題の偽証で弾劾訴追されたように一発で罪に問われかねない。
1998年11月、来日中の首相主催夕食会で、小渕恵三首相(右)から贈られた盆栽に笑顔を見せるクリントン米大統領(代表撮影)
1998年11月、来日中の首相主催夕食会で、小渕恵三首相(右)から贈られた盆栽に笑顔を見せるクリントン米大統領(代表撮影)
 各種世論調査を見ると、全体的にはトランプ氏の支持率は4割を割ることもあり、その支持基盤は極めて脆弱といえる。ただ、150日前後の支持率は、就任してやはりアマチュア的な政治手法で混乱した93年のクリントン氏と比較しても実は大差ない。さらに共和党支持者のトランプ氏への支持率は7割程度とまだかなり高い。政治的分極化を背景にしているため、この数字は93年当時の民主党支持者のクリントン氏の支持率よりもやや高いのである。