議会側のポイントとなるのが、来年の中間選挙をめぐる民主党側と共和党側の思惑の違いであろう。共和党支持者の動きを見れば、ロシアゲートについて、トランプを擁護するのが共和党議員の行動の基本原理といえるが、疑惑がさらに出てくれば、このままトランプ擁護を続けると、来年の中間選挙で自分の議席も危なくなってしまう。まさに、民主党側にとってはこれが狙いであり、さらに次のパズルのピースとなる人物を探し出し、今後も時間をかけて喚問していくであろう。

 下院の場合、弾劾を上院に訴追するには過半数が必要である。いまのところ、40議席程度共和党の方が多いため、民主党が全員弾劾に賛成するだけでなく、共和党から20人以上を弾劾賛成に引きずり込まないといけない。しかし、党議拘束がない米国の場合、議員は自由に動ける。5月初めに下院を通過した医療保険制度改革(オバマケア)代替法案では、共和党から10人以上が反対に回った。そう考えると、この数字の差は思ったほどではないとも言える。
5月7日、米ボストンでキャロライン・ケネディ前駐日米大使(左)から「勇気ある人物賞」を授与されるオバマ前大統領(UPI=共同)
5月7日、米ボストンでキャロライン・ケネディ前駐日米大使(左)から「勇気ある人物賞」を授与されるオバマ前大統領(UPI=共同)
 一方、上院の方は弾劾裁判を行う際、3分の2が賛成しなければならないため、ハードルは極めて高い。現在、共和党が52議席、民主党が48議席(無党派で民主党と統一会派を組む2人を含む)であり、下院と異なり全体の数も少ないため、共和党側から20人程度を弾劾賛成に持ってくるのは至難の業だ。

 過去にも上院での弾劾裁判にかかった大統領は2人だが、実際の弾劾まで至ったことはない。むしろ、トランプ氏は弾劾される過程で自分への非難が連日続くことに嫌気が差して辞めてしまうシナリオの方が現実的かもしれない。かつて「ウォーターゲート事件」のニクソン元大統領は、下院司法委員会で弾劾勧告が出た段階で、下院の投票が行われる前に辞めてしまっている。いずれにしろ、現時点でトランプ氏の弾劾にはさまざまな疑惑解明が必要で、まだほど遠い状況であるといえる。

 一方、ロシアゲートの最大の余波は政治の停滞に他ならない。国内政策なら、税制改革やインフラ投資といった日本経済にも影響する政策の実現が、民主党側の反対で一層遅れてしまう。さらに、トランプ外交の最大の目玉であったロシアとの協力も大きく後退する。ロシアとの外交交渉が遅れ、協力するはずだったIS(イスラム国)対策も進んでいない。また、北朝鮮問題が、外交的な解決を図ることになり、6カ国協議のような枠組みを作る場合にもロシアを引き入れにくくなっている。

 ロシアゲートの闇が深く、疑惑解明に時間がかかる分、それだけ米国も世界も、失うものが少なくない。その中で最も大きいのは、「世界を牽引(けんいん)するアメリカの大統領」という威信なのかもしれない。