メモの中には、トランプ大統領がコミー氏に長官留任を餌に「個人的な忠誠」を示すことを求めたり、フリン前補佐官の捜査を中止するよう求めるなど、自分がFBIの捜査対象になっていないかを懸念するトランプ大統領の様子が詳細に書かれていた。

 トランプ大統領は即座にメモが虚偽であると否定し、コミー氏を「嘘つき」と極めて厳しい口調で批判した。そして、コミー氏を解任したのは、彼が目立ちたがり屋で、FBIの機能を麻痺させているとし、執拗な個人攻撃を加えるなど泥仕合に発展した。その後、メディアで相次ぐスクープ報道があり、上院諜報特別委員会は、コミー氏を呼んで公聴会を開くことを決めた。

 公聴会直前の6月8日、コミー氏は、大統領と二人だけの会談と電話での会話の内容を詳細に記した「陳述書」を委員会に提出した。その内容は驚くべきもので、トランプ大統領の発言や行動が詳細に書かれていた。

 その中で、トランプ大統領がFBIの捜査中止を求めるような記述もあり、メディアは色めき立った。もし、大統領がFBIの捜査に介入したとなると、司法妨害(捜査妨害)の容疑が出てくる。司法妨害は、大統領弾劾の理由になり得るからだ。

 米国では過去に、ニクソン大統領とクリントン大統領が司法妨害と偽証を根拠に弾劾に掛けられたことがある。ただ、ニクソン大統領は自ら辞任することで弾劾を免れたが、トランプ大統領に関してはホワイトハウスでの会談を録音していたとの報道もあった。ニクソン大統領が糾弾された最大の理由は、同様の盗聴を行ったことだった。そのため、コミー事件は「第2のウォーターゲート事件」に発展するのではないかと注目されている。

 そして6月9日、上院諜報特別委員会でコミー氏の証言が行われた。午前10時から12時40分まで公開で証言が行われ、午後2時から非公開で証言が行われた。公聴会の最大の焦点は、トランプ大統領がフリン前補佐官の捜査を中止するようにコミー氏に「圧力」をかけたかどうかにあった。

 ただ、委員の質問に対する答えはメモに書かれていた範囲を超えるものではなかった。コミー氏は、ロシアが大統領選挙に介入したのは事実であると証言。FBIのフリン前補佐官の捜査に関して、「トランプ大統領が私と交わした会話が司法妨害に当たるかどうかはっきりとは断定できない」としながらも、大統領の発言に当惑したと、その場の雰囲気を語っている。
トランプ米大統領=2017年6月、マイアミ(AP)
トランプ米大統領=2017年6月、マイアミ(AP)
 また、FBIはトランプ大統領が捜査対象になっていないことを本人に伝えたことも明らかにした。メディアは、コミー氏がトランプ大統領の司法妨害を認めるかどうかに注目していたが、その証言内容は曖昧なものであった。

 こうしたコミー氏の証言に対してトランプ大統領は情報漏洩者と非難した。また、ホワイトハウスの弁護団は、コミー氏を情報漏洩で告訴する動きを見せた。これに対してコミー氏は、メモは機密情報ではないと、自分の行為は機密情報の漏洩には当たらないと反論している。