2017年06月23日 11:41 公開

ドナルド・トランプ米大統領は22日、米連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー前長官との会話をひそかに録音してはいないとツイートした。トランプ氏は5月にコーミー氏を解任した後、そのような録音があると示唆するツイートをしていた。大統領選とロシア疑惑を調べる下院情報委員会は、録音があるなら23日までに提出するよう要請していた。

トランプ氏はツイッターで、「電子盗聴や傍受や暴露や違法な情報漏洩が相次いでいるから、自分とジェイムズ・コーミーの会話の『テープ』や録音があるのか、自分はまったく知らないが、自分はそのような録音はしていないし、そのような録音を持っていない」と書いた。

一方でトランプ氏は5月9日にコーミー氏を解任した後、「ジェイムズ・コーミーはマスコミにリークし始める前に、我々の会話の『テープ』がないことを期待しておいた方がいい」とツイートしていた

この5月のツイートを機に、コーミー氏の解任理由について、昨年の大統領選でトランプ陣営がロシア当局と結託したのではないかという疑惑に対する、FBI捜査を阻止するのが目的だったのではないかと懸念が高まり、捜査を主導する特別検察官の任命に至った

どういう文脈なのか

すべては昨年の大統領に端を発している。ロシアがトランプ大統領の当選を応援するため、ロシアのハッカーたちが米各州の選挙システムをハッキングしようとしたなど、様々な手段を使って選挙結果に影響を与えようとしたという疑惑に、今回の大統領のツイートも関連している。ロシアは、介入疑惑を一貫して強く否定している。

トランプ政権発足直後には、就任間もないマイク・フリン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、就任前にロシア制裁解除について駐米ロシア大使と会談していたことを連邦捜査員や政権幹部に正確に伝えていなかったことが発覚し、事実上解任された

他にも複数のトランプ陣営幹部が、就任前にロシア政府関係者と協議していたことを指摘されている。米国では民間人が外交を担当するのは違法。

トランプ氏はこれまでもプーチン氏を繰り返し称賛し、ロシアとの関係強化を希望する姿勢を明示してきた。5月10日には、セルゲイ・ラブロフ外相やセルゲイ・キスリャク駐米大使との会談で、過激派勢力のいわゆる「イスラム国」(IS)に関するきわめてデリケートな重要機密情報を暴露している。

しかし、陣営とロシアの結託疑惑について情報漏洩が相次ぎ、コーミー氏率いるFBIが捜査を進めるなか、トランプ氏は明らかに動揺していた。

フリン氏を解任した直後の2月14日、トランプ氏はホワイトハウスで人払いをした上で、コーミー氏と一対一で話したいと申し出た。

今月8日の上院情報委公聴会でコーミー氏はこの時の会話について、大統領は自分にフリン氏への捜査を打ち切るよう指示されたと感じたほか、大統領への忠誠を要求されたと証言した。

そしてどうなった

コーミー氏は3月20日に初めて、FBIは確かにロシア政府とトランプ陣営の関係について捜査していると、下院情報委員会で公に認めた。

そして5月9日にトランプ氏はコーミー長官を解任。ワシントンに衝撃が走った。11日に放送された米NBCニュースのインタビューで、大統領は「(コーミー氏解任を)決めた時、自分に言ったんだ、『だってさ、このロシアの話のトランプとロシアのことは、でっちあげだから』って」と話している。

さらに5月12日のツイートでトランプ氏は、コーミー氏への脅しともとれるような内容の、「ジェイムズ・コーミーはマスコミにリークし始める前に、我々の会話の『テープ』がないことを期待しておいた方がいい」というツイートを書いた

コーミー氏は今月初めの公聴会証言で、このツイートを知り「頼むからテープがありますように」と思ったと証言。録音があるなら自分が書きとめた会話内容の裏付けになるので、公表してもらい、特別検察官の任命につなげてもらわなくてはと思い、自らのメモをマスコミに提供したのだと話した。

また公聴会に対して、自分が記録した大統領とのやり取りの詳細を証言した。

上院情報委と同様にロシア疑惑を調べている下院情報委員会は今月9日、もし会話の録音が存在するならば23日までに提出するようホワイトハウスに書簡で要請した。

そしてトランプ氏は22日、「電子盗聴や傍受や暴露や違法な情報漏洩が相次いでいるから、自分とジェイムズ・コーミーの会話の『テープ』や録音があるのか、自分はまったく知らないが、自分自身はそのような録音はしていないし、そのような録音を持っていない」とツイートした

録音の存在を5月12日に示唆してから、録音はないと回答して様々な憶測を終わらせるまでになぜ1カ月以上もかかったのかと質問され、ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は、「あなたたちが答えを欲しがったから、大統領が答えてあげたんですよ。週の終わりまでに答えると言っていて、その通りにしたまでです。そのタイミング以外のことについては、私はこれ以上なにも言えません」と答えた。


<解説> ホワイトハウス劇場の芝居っ気――ジョン・ソープルBBC北米編集長

ドナルド・トランプ政権には、テレビのリアリティー番組とそっくり同じ要素がいくつかある。政権幹部の人選をしていた時もそうだった。候補が次々とトランプタワーを訪れる様子は、まるでオーディションのようで、トランプ氏もオーディションのように扱っていた。

ドナルド・トランプ氏の物事の進め方は、自分が司会をした番組「アプレンティス」の進行ぶりとよく似ている。誰が雇われ誰がクビにされるのか、番組の最後まで見ないと分からなかったあの方式だ。

ホワイトハウスにもその要素はある。きわめて重要な政策課題の扱いも、非常に芝居がかっている。たとえば、気候変動対策のパリ協定については、どうするか前から決めていたにもかかわらず、週の終わりに発表すると発表する。そうやって、じらすのだ。

こんなやり方は見たことがない。米国の政治で初めてというだけでなく、私がこれまで世界各地で取材してきたあらゆる政治の世界でも、こんなことは見たことがない。

(英語記事 Trump: I did not record ex-FBI chief James Comey