田中秀臣(上武大ビジネス情報学部教授)

 日本のリベラルはどん詰まりの状況である。まず「日本のリベラル」とは何かを定義すれば、現状では、単に「反安倍政権」というくくりが最も具体的かもしれない。
東京・築地にある朝日新聞東京本社(斎藤浩一撮影)
東京・築地にある朝日新聞東京本社(斎藤浩一撮影)
 評論家の栗原裕一郎氏、社会学者の北田暁大氏、批評家の後藤和智氏の共著『現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史』(イースト新書)では、リベラルや左派について興味深い定義がなされている。それは日本のリベラルは、「朝日・岩波文化人」という特定のマスメディアご御用達であるということだ。

北田 一概に左翼といっても難しいですが、栗原さんは左翼という時、どういう方を想定していますか。

栗原 左翼というかリベラルというか。日本の場合、よく言われるように「リベラル」の定義が難しいんだけど、単純に考えると要は、朝日・岩波文化人の系列に連なる人々ということになるんじゃないですか。

北田 僕、小熊さんを批判してからすっかり朝日から声が掛からなくなりました(笑)。社是なのでしょうかね。左翼の典型は小熊英二(編集部注:慶応大教授)さんとか、今なら内田樹(同:たつる、神戸女学院大名誉教授)さんとかなのかな。

 『現代ニッポン論壇事情―』は、現代日本のリベラルと左派を徹底的に批判し、その問題性を明らかにしている好著だ。筆者のように、最近のリベラルや左派のあり方に大きな疑問を抱いたり、またはポスト安倍政権を考えている人たちには極めて参考になる本だ。

 3人が容赦のない毒舌を全開にする様は、10数年前に筆者も参加した『エコノミスト・ミシュラン』(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄共編著、太田出版)を思い出させる。『エコノミスト・ミシュラン』は、当時の経済論壇で活躍していた経済学者やエコノミストを総点検し、徹底した批判を浴びせて、かなり話題になったものだ。栗原氏らの本は、そのノリを2010年代の論壇一般に拡大したものだ。この一冊を読むと、いかにいまのリベラル・左派がどん詰まりの状況になっているかが鮮明である。

 そのどん詰まりの状況は、端的に「経済オンチ」という性格で表現されている。例えば、安倍政権がさまざまに批判されても、それでも他の野党勢力よりも圧倒的に支持率が高いのは、私見では経済政策の成果がかなりあると思う。特にいまの若年層の支持の高さは、端的に経済の安定化、雇用の回復に顕著な実績をあげたからであろう。この点は論説「若者に変化を求めた関口宏の本心はやっぱり『安倍下ろし』だった」で詳細に解説した。