河合雅司・産経新聞論説委員

 国土交通省の「国土のグランドデザイン」によれば、2050年には、現時点で人が住んでいる地点の63%で人口が半分以下に減るという。

 少子化が進み、高齢者が亡くなると人口そのものが減る地域が拡大するのだ。人が減れば地元経済も衰退し、働き口をなくした若者が大都会に流出する悪循環に陥る。


「すべて維持」は困難

 少子化や人口減少をただちに止める秘策はない。政府は言葉を濁すが、人口の将来推計を見る限り、すべての地域が「消滅」の危機から脱することは難しい。

 ところが、地方の立て直しというと、いまだに「地域経済の活性化には、大型公共工事の増額しかない」といった旧来型の対策を求める声がなくならない。

 いま問われているのは一時的な景気浮揚策ではなく、人口減少や高齢化に耐え得る社会への作り替えだ。具体的方策としては、拠点となる都市を定め、人口集積を図ることである。政府は「国土の均衡ある発展」といった幻想を振りまくことをやめ、何十年も先の社会を見越しての対応を取る必要がある。

 各省がアイデアを出し始めている。総務省は20万人以上の「地方中枢拠点都市」を軸に周辺自治体が協約を結び連携する構想を描く。国交省は複数の都市を鉄道や高速道路で結ぶ「高次地方都市連合」構想だ。国交省は過疎集落にも目を向け、歩ける範囲に商店や診療所を集める「小さな拠点」も提唱している。

 これらに共通するのは、地方が生き延びるには、ある程度の都市規模が必要との視点である。

 しかし、こうした一部の自治体に人口を集める構想には、人口を送り出す周辺自治体の抵抗が強い。「切り捨て」にされるとの警戒だ。

 だが、人口を大きく減らす自治体が十分な行政サービスを続けることは困難である。現状の市町村の線引きを乗り越え、拠点都市と役割分担してネットワークを構築することが、結果として、より多くの自治体や集落を存続させることになる。

最重要は若者の雇用

 地方の存続には、若者をつなぎとめ、大都市に出た若者を呼び戻すことが必要だ。

 美しい景観や伝統・文化の掘り起こしなど街の魅力を高めるのはもちろんだが、最重要ポイントは、若者が働きたくなる職場の創出である。安定した仕事がなければ若者は定着できない。企業誘致だけでなく、起業支援や地域ブランドの育成も急がれる。

 第2のポイントは市街地の「にぎわい」だ。街に活気や刺激がなくては、若い世代を引きつけることは難しい。

 「国土のグランドデザイン」によれば、3大都市圏を除く地域では、10万人以上の都市を核とする「30万人都市圏」に百貨店や映画館、大学、救命救急センターといったサービスが存在する。

 見方を変えれば、この規模を割り込むとサービス内容によっては企業が撤退を検討し始めるということである。いかに「30万人都市圏」をつくるかが、地方生き残りの目安の一つともなりそうだ。

 「にぎわい」は若者の雇用確保とも密接に関係する。大型商業施設や病院などは、若者の雇用の場でもあるからだ。これらが撤退や倒産に追い込まれたのでは、そこで働く若者たちが職を失い、大都会流出に拍車がかかる。

拡大路線と決別せよ

 ポイントの3つ目は、子供を産み育てやすい環境の整備だ。次世代が生まれなければ、一時的な人の寄せ集めに成功したとしても、再び減ることになる。

 キーワードは「拡大路線との決別」だ。拠点都市を「ミニ東京」のごとく膨張させたのでは、人のつながりは希薄になり、子育てと仕事を両立させることもできない。

 大都会では味わえない「ゆとりある暮らし」を選択できるようにすることが、新たな魅力となる。コンパクトな市街地とすることで「にぎわい」も生み出される。

 今後、若い世代は全国的に減る。「消滅」の危機を乗り切るには、大都市はもちろん、地方都市同士の“若者争奪戦”にも勝利しなければならない。住民を含めた意識変革と柔軟な発想こそが、成功に導く。