佐々木信夫(中央大大学院教授)


 今回の東京都議選は、「都政の見える化」を進める小池百合子知事の信任を得る性格が強く、小池氏が率いる地域政党「都民ファーストの会」の大躍進に終わった。都民ファーストが第1党、それに自民、公明、共産、民進と続く結果だ。これで都議会の構成は、「自・公」主導体制から「都民ファ・公」主導体制に変わるだろう。

 「東京大改革は都議選に勝つこと」。こう公言してはばからなかった約1年に及ぶ小池都政。豊洲移転も築地再整備も五輪施設見直しもすべては都議選に焦点を当てて政局化し、ドラマ化することでメディアの話題を独り占めする。端から見ればそう思えるような都政運営だったが、少なくも都議選に勝つための戦略という点では見事成功したと言えよう。
記者会見する都民ファーストの会代表の小池百合子知事=2日午後、東京都新宿区(納冨康撮影)
記者会見する都民ファーストの会代表の小池百合子知事=2日午後、東京都新宿区(納冨康撮影)
 なぜ、そうまでして都議選の結果にこだわるのか。都知事の役割は議決機関の都議会を掌中に収めることなのか。そんな疑問を解く間もなく都議選は終わった。一つの目的を達した小池都政だが、その思惑通り東京大改革は進むだろうか。それより、この東京大改革って一体何をやる改革なのか。「宴の後」については必ずしもハッキリしない。

 筆者は、今回の選挙での有権者の判断基準を以下の点において注目していた。

①小池新党は都政を託するに値する政党かメンバーか。風に乗るだけではないか。

②この先も「都政の見える化」改革を続けるのか。他方、政策の遅滞をどうみるか。

③小池知事は大組織、大都市の経営者として信頼できるか、決められない知事では。

④都議会で都民ファ+公明が過半数を占める選択を是とするか非か。自民の存在は。

⑤都議選後の政界再編をにらみ小池新党を国政改革の台風の目に押し上げるか否か。

 具体的には、
 ①小池都政の都政運営の仕方をどうみるか。議会にも職員にも都民にも相談なく進めるワンマン都政のやり方。情報公開、見える化を進める一方、政策形成・決定過程は外部顧問依存のブラックボックスに近い。合意形成より知事独裁に近いメディファーストの都政運営をどう評価するか

 ②豊洲移転か築地再整備かその折衷案か。豊洲移転延期から相当時間とカネが掛っている。豊洲移転と築地再開発の方向は示すが採算面など依然不透明。カネと時間などロスが非常に大きくなっているが、このやり方にストップをかけるのかどうか。

 ③五輪準備は相当遅れているが大丈夫か。遅滞する環状2号線整備、全体的に遅れる五輪向け都市整備。「総合的に判断」としながら、ワンイッシュー(単一争点)にこだわり整合性を欠く都市経営をどうみるか。

 ④小池都政の政策面への期待感はどうか。待機児童の解消など少子化対策、待機老人、インフラ劣化など「老いる東京」対策、首都直下など防災対策という都民生活に直結する政策問題にどのようなプログラムとスケジュールで取り組むのか。

 ⑤都内のコップだけでなく、東京一極集中批判に都政はどんな政策態度で臨むのか。

 しかし、実際はこの5つの争点に答えを出すような論戦はあまり深まったとは言えなかった。選挙戦が始まると、意外に都政の政策をめぐる論戦は乏しく、「決められない知事」との批判も弱まって、豊洲移転・築地再整備をめぐる経済論戦もなく、小池都政を支持するか否か、安倍政権の緩みをどう見るか、といった点に終始したように思う。都議選なのか、国政の中間選挙なのか、それがダブってしまったような選挙だった。この選挙で都民はいったい何を選択したのだろうか。