小池氏が掲げた「東京大改革は都議選に勝つこと」。この目標は見事に達成されたことになるが、キャッチフレーズとした「古い議会を新しい議会に変える」はどうなるのか。都議会改革は確かに都政改革の大きな柱といえる。

 ただ、メンバーが変わり、当会派の勢力図が変わったからといって、それだけで新しい都議会になるわけではない。大東京の都政改革は、議会サイドも役所サイドも従来の個別事業中心の事業官庁から全体を俯瞰し、都市経営に持ち上げていく。「政策官庁」に脱皮できるかどうかが核心的な論点だ。

 都議会が「政策都議会」に脱皮できるか、そのためにやるべき改革は何か、そこが焦点になる。古いメンバーを新しいメンバーに変えたからといって、やることが同じなら何も変わらない。たぶん、小池氏の問題意識も「議論のできる」「提案のできる」議会に変えたいと主張した点を見ると、この点は同じではないか。

 もともと「通りやすく、落ちやすい」というのが都議選の特徴である。毎回、何かしらの風が吹き、その風に乗って当選する議員が多く、だいたい3分の1が入れ替わる。結果、当選回数も少なく、ある意味「素人議員集団」に近いのが都議会であり、平均年齢も若く当選1、2回という新人議員が6割近くも占める。
都議選の期間中、候補者の第一声に耳を傾ける聴衆=6月23日、東京都渋谷区
都議選の期間中、候補者の第一声に耳を傾ける聴衆=6月23日、東京都渋谷区
 冷静にみると、今回の都民ファーストの大量当選でメンバーは大幅に入れ替わったが、これまでの都議選とそう大きくは変わらない。そうした素人集団の間隙を縫うように、ごく一部の多選議員が「ボス化」し、議会運営を差配する構造が生まれやすくなる。

 それを小池氏は「ブラックボックス」とか、「ドン支配」と表現したが、今回の選挙結果でその構図が大きく変わるのか。なかなか信じがたい。その手掛かりをどこに求めればいいのか。

 東京大改革というなら、その勢力図の変わった都議会を通じて、どのように東京の抱えるさまざまな大問題を解決していくのか。「役に立つ都議会」にどう変えて行くのかが問われよう。そこまで見ていかないと、今回の都議選の結果が都政にプラスになるかどうか、その評価も難しい。

 都議会改革は報酬や手当の改革より、政策自立、都政の政策の質を高めることがテーマだ。政策問題と格闘し、質を高めるような都議会活動に変えられるかどうか。都政は、議員と知事を別々に選び、双方が抑制均衡関係を保つよう求めた「二元代表制」だ。政権与党の党首が首相になり、内閣を率いる国の制度とは全く異なる。議会は知事を翼賛する機関でもなければ、投票マシーンでもない。独自の代表からなる都政の政治機関である。

 対して、都知事は行政の最高責任者であり、本来は執行機関の立場と立法権を有する議会とは離れた立場、つまり公正中立の立場から都政運営が求められる。だが、ここまでの流れを見る限り、あたかも都知事が政党の党首になり、都議会で多数勢力を形成し議会を差配する。都議会に与党勢力を意図的につくり、それが政権与党として都知事を支えるという「議院内閣制モデル」を前提にコトを進めているように見える。それが「良い都政」を実現する近道だと主張する。果たして、それは本当に正しい方向なのか。

 都民ファーストが第1党になったからといって、議会本来の役割、つまり決定者、監視者、提案者、集約者の役割を放棄するような行動は許されない。あくまでも機関対立主義を前提に、執行機関の知事と対峙していくスタンスが求められる。

 都議会は知事の追認機関であってはならない。これは地方自治の大原則である。地方自治を支える「車の両輪」として、都議会は都知事と抑制緊張関係を保ちながら、予算や施策を監視する責任がある。

 この春の都議会で、石原都政で展開された豊洲市場の土地購入、移転の経緯を28人の証人喚問までしてつぶさに調べ上げた。その結果、その不透明ぶりも浮き彫りになり、小池氏はそれを長年にわたって知事与党だった自民、公明両党が、チェック機能を十分果たしてこなかった証左と強く批判した。そのことを今回の選挙で小池新党も強く批判し、その改革姿勢に多くの都民が支持した。