広野真嗣(ジャーナリスト)

 今年最大の政治決戦、東京都議選で小池百合子知事が代表を務める都民ファーストの会が大勝し、議会の刷新を掲げる小池氏を支持する勢力が過半数を獲得した。

 政策が評価され、都政のチェックや決定を委ねる人物として適した者が選ばれたのであれば違和感はない。だが、この大差がついた原因は、国政における自民党のオウンゴールである。

 「現状へのノー」という表現といえばそれまでだが、今回は「安倍内閣にノー」の表明であり、都政とはかけ離れたものさしで投じられた選択だったという点は記憶しておきたい。

 都議会において刷新を唱える小池系勢力が主導権を握れば、当然ながら善かれ悪しかれ今後、政治的な対立や混乱が予想される。今回、とりわけ不安要素に見えるのは、3年後には東京五輪が控えている現実があるからだ。主催都市である東京都には、対立をもてあそんでいるような時間的余裕がほとんど残されていない。すでに時間を空費してきたからだ。

 最大の懸案となっていた市場移転問題で、小池知事は告示直前の6月20日、「豊洲移転+築地再開発」の方針を発表した。

小池百合子都知事=7月2日、東京都新宿区(納冨康撮影)
小池百合子都知事=7月2日、東京都新宿区(納冨康撮影)
 築地が所在する中央区のまちづくりを知悉(ちしつ)している吉田不曇副区長は歓迎しつつ、心中穏やかではない。「豊洲移転の決定を高く評価します。しかし、都心と湾岸エリアを結ぶ環状2号整備だけでなく、五輪開催時の輸送計画の策定など急いでやらなければいけないことがいくつもある」

 環状2号線は市場移転後、築地跡地を通って選手村(晴海)と新国立競技場(新宿区)などがある都心を結ぶ幹線道路。市場の移転延期で、築地を前後する約500メートルの地下トンネル部分の工事が中断していた。すでに五輪に間に合わなくなった地下トンネルは先送りし、地上部の暫定道路で対応する方針が今回、確定した。

 道路だけではない。築地跡地には選手・関係者向けバス1000台などを収容する仮設の巨大車両輸送拠点が整備される。その整備に1年を、アスベスト対策が必要になる築地の解体工事には1年半をそれぞれ要する。20年7月の五輪に向け3年と迫る中、インフラ整備の日程に、もはや「遊び」は存在しない。

 小池氏は移転時期の目標を来年5月としているが、再び築地残留の「夢」を抱いてしまった約500の仲卸業者の心情を、もういちど移転に向けて動かすことができるのか。