過去を「断罪」した小池都政10カ月の間に、都庁で長く移転に携わった幹部の多くは市場の職場を去っている。政治家自らが足を運び、汗かく努力を重ねなければ信頼は得られないだろう。

築地市場の関係者に頭を下げる小池百合子東京都知事
=6月17日、東京・築地(桐山弘太撮影)
築地市場の関係者に頭を下げる小池百合子東京都知事 =6月17日、東京・築地(桐山弘太撮影)
 築地からの移転をよしとしない者が現れれば、五輪の足かせとなりかねない。小池知事はもちろん、都民ファーストの会の都議たちも「なったばかりでわからない」とは言っていられない。待ったなしなのだ。

 ハード整備の遅れよりも深刻なのは、五輪時の交通・輸送計画をどうするか、全く見えていないことだ。

 例えば環状2号を東京湾側に抜けていくと、バレーボール(有明アリーナ)、体操(有明体操競技場)、テニス(有明テニスの森)、自転車競技(有明BMXコース)など人気種目の会場が集積し、プレスセンターとなる東京ビッグサイトもある。

 観客の大半を占める日本の地方からの来場者がこれらのエリアにどうアクセスする想像してみればよい。

 迷路のような東京駅に降り、困り果てた高齢の観客をどう誘導するのか。仮にそういう人たちがタクシーに流れれば、環状2号や晴海通りは目詰まりを起こし、選手が試合開始に間に合わない事態すら引き起こしかねない。

 りんかい線(東京臨海高速鉄道)やJR京葉線といった公共交通網を最大限活用するのは当然としても、出勤ラッシュやテロ対策と合わせ、安全を確保した計画づくりは一刻を争う。

 五輪後を見据えた小池都政も気になる。小池氏の発表によると築地の跡地は「5年をめどに再開発」との方針だ。

 豊洲整備の借金(都市場会計が発行する企業債)残高3500億円は、4000億円超の築地跡地の売却益を充てる予定だった。この借金は20年から26年にかけて順次返済予定で、ピークの25年には1322億円を返済しなければならない。築地を売却しない以上、新たに一般会計で借り換える。すなわち新たな都債を発行する可能性が高い。当然だが、一般会計で新たに発生する金利負担は「小池裁定」によって新たに生じる税の支出となるのだ。

 「改革派」を演出するためなのか施設の見直しにご執心だった小池知事だが、もはや「見直し」の段階はとうに過ぎ、計画を「詰める」リーダーシップこそ求められている。

 逆に都議会はその準備に抜け穴がないか、超党派で徹底的にチェックしなければいけない。第一党を失った自民党も、もはや品のないヤジや、ファクトを問わない嫌みな質疑をしている時間はない。