上野動物園の飼育環境は国内動物園の中では良い方であると思いますが、それでも一部動物の環境は非常に乏しく、また動物園での飼育に限界のあるホッキョクグマなどの動物は常同行動(異常行動)をし続けています。その他、同じく東京都が養っている動物の多くも、低い福祉環境の中、監禁生活を強いられています。

上野動物園のホッキョクグマ=2011年10月
上野動物園のホッキョクグマ=2011年10月
 叩く蹴るなど能動的な行為だけが虐待なのではなく、動物がその動物らしい行動を発現できず、動物福祉の5つの自由(飢餓と渇きからの自由。苦痛や傷害または疾病からの自由、恐怖および苦悩からの自由、不快さからの自由、正常な行動ができる自由)が守られていないことも虐待的な飼育です。欧米や南米で批判を受けたり閉鎖したりする動物園の環境を見ると、日本ではトップクラスといえるような環境であったりします。それほど日本の動物園のレベルは大変低く、私たちアニマルライツセンターも海外観光客から日本の動物園がひどすぎるという相談を度々受けています。動物の自由を奪い飼養管理することの責任を重く捉え、動物の福祉改善に必要なお金と労力を費やしてほしいと思います。

 また、子どもたちに、本来の行動を取れない環境下に置かれた動物を見せ、あれがクマだよ、ゾウだよ、と教えることは誤った認識を植え付ける行為です。比較的優遇された動物と冷遇された動物が混在していることも精神的悪影響を与えます。パンダや犬や猫のようなかわいい動物は守り、畜産や実験に使われる動物や好みに合わない動物は守らず、ひどい状態のままでよいとすることが、当たり前と感じてはいないでしょうか。明らかな差別行動ですが、その差別に人々は気が付くこともなくなってしまっています。

 犬猫の保護以外、日本の動物保護は他国から後れを取っていますが、その理由の一つは幼少期に虐待状態の動物と動物格差を見慣れてしまっているということにあると私たちは分析しています。動物園の役割の中に「教育」を入れるのであれば、動物の生態や行動が観察できる広い環境と本来の行動を発現させるケアを、飼育するすべての動物に等しくとり入れなくてはなりません。人気のある動物以外、動物福祉の5つの自由を担保したケアが保証できないということであれば、動物種、動物の数を思い切って減らしていくべきではないでしょうか。
 
 パンダの赤ちゃんが産まれた上野動物園で、今後パンダたちはまさに「人寄せパンダ」としての見せ物になるという仕事を囲いの中でこなさなくてはなりません。パンダに限らず、人気のある動物の赤ちゃんの出産があれば、動物園はそれを使って集客し、そして一部の人々は週末の娯楽に動物園を選択します。動物の赤ちゃんが生まれるかどうかは、動物園にとっては死活問題なのかもしれません。しかし、一生自由を奪われ狭い囲いの中に閉じ込められ続けることは、それが希少種であろうと、かわいかろうと、個々の動物にとっては悲劇でしかないということに変わりはないということも、認識してほしいと思います。