マスコミはすぐに「報道しない自由」を発動し、中国の意図を隠蔽してしまう。そもそも、パンダビジネスとは侵略と人権弾圧の歴史の象徴だ。この点を抜きして、パンダを語ることなかれなのだ。

 まず、重大な事実を確認しておこう。そもそも、パンダは中国の動物ではない。チベットの動物である。それがいつのまにか中国を象徴する動物にすり替えられてしまった。そのテクニックはこうだ。

 かつて、パンダの生息域は現在よりもずっと広かった。しかし、辛亥革命以降、中華民国軍が東チベットを侵略し、多くの中国人が入植してきたことでパンダは乱獲されるようになった。パンダは毛皮を取られたり、食用にされたりしてその数を激減させた。

 チベットの支配地域に残ったパンダは虐殺を免れた。なぜならチベット人は仏教徒であり、無益な殺生をしなかったからだ。パンダが生き残った地域は、現在の青海省のほぼ全てと四川省の西半分にあたるエリアにある。パンダの食料である笹はチベット高原の東斜面に多く生息するためだ。そしてこの地域こそが、中華民国の侵略を免れチベットに残った領土だったのだ。
中国・四川省成都の施設で、餌を食べる5頭の子パンダ
中国・四川省成都の施設で、餌を食べる5頭の子パンダ
 ところが、1950年に悲劇が訪れる。今度は中共軍がやってきた。東チベットのチャムドが侵略され、翌年にはチベットの首都ラサが占領された。そして、1955年にチベットの東半分は青海省と四川省に組み込まれてしまったのだ。中国はチベットから領土を盗み、その地域に生息していたパンダまでも盗んでいったのだ。

 現在、世界中で育てられているパンダを見るたびに、人々はそのことを思い出すべきだ。中国による激しい人権弾圧が繰り返されるチベットでは、抗議の焼身自殺が相次いでいる。国際社会はチベットを無視してはならない。

 次に、中国が行っているパンダの有料レンタルビジネスの正当性がすでに失われていることについて指摘したい。これは私が勝手に言っているのではなく2016年9月の、世界自然保護基金(WWF)の公式な見解だ。

 この見解の中で、WWFはパンダの格付けが「絶滅危惧種(endangered)から危急種(vulnerable)に引き下げられた」ことを朗報として伝えている。国際自然保護連合(IUCN)によれば、2014年までの10年間で中国国内の野生のパンダの頭数は17%増加し1864頭になったそうだ。私が子供のころ、パンダは千頭しかいないと言われてていたが、いつのまにこんなに増えたのだろうか。IUCNの「レッドリスト」にも「Current Population Trend(最近の頭数の傾向) : Increasing(増加中)」との表記があった。

 パンダがもはや絶滅危惧種ではなくなった以上、有料でレンタルして共同研究を進める正当性もかなりグラついていると思える。しかし、中国にこのビジネスをやめる気配はない。元々、チベットから盗んできた動物なのに、なんと図々しいことだろう。

 元々パンダに罪はない。罪深いのは中国だ。私たちはパンダを見るたびに、その背後にあるドロドロしたものから目を背けてはならないのだ。