北の独裁体制に高まる不満 テロ検討の人物がいるのは確実

『NEWSポストセブン』 SAPIO 2017年7月号

読了まで3分

 昨年5月、平壌で36年ぶりとなる朝鮮労働党大会の第7回大会が開かれた。同じ時期、北朝鮮中西部・平安南道のある都市では、秘密警察に当たる国家安全保衛部(現国家保衛省)の地方組織が、思想教育を目的とする「講演会」と呼ばれる、秘密の集会を開いていた。

 そこでは金正恩氏が乗る専用列車の爆破未遂事件について、そして金正日総書記の死去(2011年12月17日)の直後、「組織の地位にあった男」が元服役囚など4人の男をそそのかし体制転覆を謀議していたという事件についても報告がなされた。ジャーナリスト・城内康伸氏がレポートする。

* * *

 保衛部は講演会が開かれた当時、党大会を「金正恩体制を強固にするための国内イベント」(韓国情報機関・国家情報院)として無事に終えるため、取り締まり強化に注力していた。

 ある北朝鮮消息筋は、北朝鮮当局が党大会前、政権への忠誠心が低いと判断している「不純分子」を数千人規模で、平壌から追放していた、と指摘する。
朝鮮人民軍創建85年の記念日を迎え、平壌の「万寿台の丘」に立つ金主席と故金正日総書記の銅像に献花に訪れた人たち=4月25日(共同)
 報告された2件のテロ計画が実際にあったのかどうかは不明だ。ただ、保衛部幹部は次のように付言している。

「みなさんの中には『講師の話は、本当なのだろうか。われわれを覚醒させようと、話を作っているのでは』と疑っている人がいるかも知れない。実際、私自身が、このような想像を絶する事件が起きるとは、考えもしなかった」

 国家保衛省報道官は今年5月5日、米国の中央情報局(CIA)と韓国国家情報院が主導した「最高首脳部を狙った生物・化学物質による国家テロ計画」を摘発したと発表し、米韓を非難した。

 米国防総省はその日のうちに、「そのような現実を知らない」と一蹴した。北朝鮮専門家は「米国で動いている北朝鮮をテロ支援国に再指定する動きに対抗する意図」とみる。今回、紹介した2件の事件は、国家保衛省が発表した事件とは、性格が異なる。事実だとすれば、北朝鮮住民が自分の意思で体制に反旗を翻そうとした点だ。

 韓国情報当局者は「事前に発覚し、未遂に終わったとされる以上、計画の有無を確認することは困難」と語る。その上で、次のように強調してみせた。

「北朝鮮では、独裁体制に対する不満が高まっている。われわれの知らないところで、報告にあったようなテロを考える人物が少なからずいるのは、間違いないだろう」

【PROFILE】しろうち・やすのぶ/北朝鮮事情に精通するジャーナリスト。主な著書に『猛牛(ファンソ)と呼ばれた男』『昭和二十五年 最後の戦死者』『朝鮮半島で迎えた敗戦』など。

関連記事
■ 北朝鮮の核実験 月曜日に行われる可能性が高いと専門家指摘
■ 北朝鮮と韓国との全面戦争はあるか? 専門家はないと説明
■ 金正日総書記の死去直後、活動家らが体制転覆を謀議していた
■ 北の日本人所在調査 拉致被害者、特定失踪者抜け落ちる恐れ
■ 金正恩氏 脱北者に激怒し中国国内で韓国人拉致を指示か

この記事の関連テーマ

タグ

「世界最強の核保有国」北朝鮮に打つ手なし

このテーマを見る