潮匡人(評論家)

 私が予測した通り、北朝鮮は7月4日の米独立記念日に発射した。いわゆる大陸間弾道ミサイル(ICBM)である。なぜ予測できたのか。今後どうなっていくのか。その答えは、発射当日のテレビ東京やニッポン放送の番組でコメントさせていただいた。詳しくは拙著最新刊『安全保障は感情で動く』(文春新書)に書いたので、ぜひ、御購読いただきたい。

 ここでは発射後の報道検証に絞ろう。上記ニッポン放送の番組出演は以前から予定されていた。夕方の生放送番組「ザ・ボイス」である。リスナー間では、私が出演すると決まって大事件が起こる、というジンクスがささやかれており、今回もそうなった。

 当日午前、発射のニュース速報を見て、やはり撃ったか…と思っていた矢先、テレビ東京から出演オファーを頂戴した。番組が同じ夕方の生放送(ゆうがたサテライト)のため、昼過ぎにコメントを収録する格好になった。

 北朝鮮が国営放送を通して画像を公表するかもしれない、それらを確認した上でコメントしたい…そう思い、バスの時刻を気にしつつ、当日正午のNHKニュースを見て、驚いた。「台風、大雨関連のニュースを中心に時間を(12時45分まで)延長してお送りします」と始まり、いつまで待っても報道しない。やむなく見切り発車でバスに飛び乗った(後で見たら途中に台風報道をはさみながら12時21~28分まで報じていた)。

 かくして少ない情報をもとに当日の番組でコメントする羽目に陥った。だから分析を間違えた云々の言い訳ではない。視聴者はご存じのとおり、発射直後から私は「ICBM」と明言した。ニッポン放送の番組でも評論家の宮崎哲弥さんと放送時間の大半を割いて「ICBM発射」の意義を語った。あの時点で「ICBM」と断じたのは、マスメディアでは私だけ。日本政府も翌日まで明言できず、「分析中」と言葉を濁し続けた(防衛相の会見など)。

 そもそもニュースの扱いが小さい。小さすぎる。発射当日夕刻には、北朝鮮が「ICBM火星14型発射に成功」と「特別重大報道」したにもかかわらず、同夜のNHK「ニュース7」もトップ項目は「台風と前線」だった。同様に「ニュースウオッチ9」のトップも「台風3号」。なぜ、みな過小評価したのか。それがICBMとは思わなかったから。そういう次第であろう。
北朝鮮のミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に着水したことを報じるNHKニュース=2017年7月4日、東京都内(AP)
北朝鮮のミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に着水したことを報じるNHKニュース=2017年7月4日、東京都内(AP)
 他方、世界の主要メディア(と当局)は大きく扱った。米韓両国は言うに及ばず、北朝鮮のICBMが届かないイギリスの公共放送BBCもトップ項目で詳しく報じた。例外は日本だけ。

 ところが、翌5日に至り、それらが一変する。理由は単純だ。アメリカ連邦政府がようやく「ICBM発射」(国務長官)と認めたからである。その途端、反米論調で知られる新聞や番組も含め、みな一斉に「ICBM」と報じ始めた。日本政府も例外でない。脱力感を覚える。

 過去ずっと、こうだった。北の「火星12型」が発射された今年5月も、今回と同様の展開をたどった(詳しくはアゴラ関連拙稿)。今年4月のバカ騒ぎも思い出す。マスコミが重用する「識者」やジャーナリストらは、みな4月15日や4月25日を「Xデー」と断じ、危機を煽(あお)った。知り得るはずのない「米軍の最高機密」を論拠にした猛者もいる。私は一貫して異論を唱えたが、NHK以下多くの主要メディアは聞く耳を持たなかった。