西岡力(麗澤大学客員教授、「救う会」全国協議会会長)


 北朝鮮がついに大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を強行した。今年の新年の辞で金正恩がその準備ができていると豪語したとき、トランプ米大統領(当時は当選人)は「そんなことは起きない」とSNSに書いたが、起きてしまった。金正恩は米国の独立記念日への「贈り物」だったとうそぶき、米国連大使は武力攻撃もありうると発言するなど米朝の緊張は高まっている。

 トランプ大統領はオバマ政権の対北政策である「戦略的忍耐」は間違っている、と繰り返し表明している。「戦略的忍耐」とは、北朝鮮は経済的困窮と国際的孤立で困難に直面しているから、核開発放棄を宣言するまで放っておけば、必ず助けを求めてくるという楽観的見通しに立つ、問題先送り政策だった。ところが、オバマ政権の10年間で、北朝鮮の核ミサイル開発は格段の進歩を見せ、数年以内に米国本土に届く核ミサイルを保有するところまできてしまった。

 トランプ政権はすべての手段をテーブルの上に置き、まず北朝鮮の9割の貿易相手国である中国に経済制裁を強めさせて、圧力を加えるという政策をとっている。中国は本当に北朝鮮に圧力を加えているのか。トランプ大統領は7月5日、「中国と北朝鮮との間の貿易は第1四半期に約40%増加した。米国は中国と手を組んできたが、こんなものか。でもわれわれは試してみるしかなかった」とSNSに投稿した。

別荘の中庭で中国の習近平国家主席(右)と歩くトランプ米大統領=4月7日、米フロリダ州
別荘の中庭で中国の習近平国家主席(右)と歩くトランプ米大統領=4月7日、米フロリダ州
 私はここで「試してみるしかなかった」という部分に注目する。今年4月、米韓軍事演習の実施、米国空母が2隻、朝鮮近海に出動するなどを受けて、米国が北朝鮮への爆撃を行うのではないかという予測が、日本の一部専門家やマスコミの中で沸騰した。そのとき、私は「まだ早い、米国はまだ試していないことがある、それを試してみてダメだったら軍事攻撃が浮上する」とコメントしていた。

 それでは何を「試す」のか。中国と国際社会に対して強度の経済制裁を実施させる。具体的には北朝鮮の統治資金を徹底的に締め付けることと、石油の対北輸出を止めさせることだと考えていたが、7月になっても北朝鮮は音を上げず、ついにICBMの発射を行った。

 しかし、トランプにはまだ、試してみるべきカードが残っている。それは北朝鮮と取引をしている第3国企業と銀行に対して、ドル取引を停止するといういわゆる「セカンダリー・サンクション(2次制裁)」だ。ICBMの発射の直前にその一部はすでに発動されていた。