草刈秀紀(WWFジャパン)

 1971年2月、日本で『侵略の生態学』(※1)という書物が出版された。通称『エルトンの侵略の生態学』という。原著は58年に刊行されている。本書の日本語版前書きには、次のような記述がある。

「…なかでも人類の働きによる生物種の移動は、世界のどの地域においてもたいへんなもので、新しい生物が、それまで住んでいなかった地域へ、つぎつぎに“侵略”して行っています。これには、人間が意図して持ち運ぶ場合も、また意図しないにもかかわらず移動させてしまう場合もありますが、とにかく最近百年間には、この動きがとくに激しくなっているのです。こうした結果、一連の“生態的撹乱(かくらん)”がまき起こり野生の動植物間に何千万という全く新しい相互関係を生み出すと同時に、人間の健康や天然資源、さらには人間環境全体をも狂わしています」

 『エルトンの侵略の生態学』が指摘する点は、現在、世界中で起こっている外来種の問題そのものであり、話題となっている外来種による影響と対策は、既に日本語版で46年前に指摘されていたことになる。

 外来種の影響は、生態系の攪乱のみならず、人間の健康や天然資源、さらには人々の環境全体をも狂わしているのである。

 昨今の外来種問題や防除対策などの法的根拠として、生物の多様性に関する条約(生物多様性条約)の第8条(h)「生態系、生息地若しくは種を脅かす外来種の導入を防止し又はそのような外来種を制御し若しくは撲滅すること(第8条・生息域内保全)」がよく引用されている。
国際自然保護連合の「世界の侵略的外来種ワースト100」に入っているワカメ
国際自然保護連合の「世界の侵略的外来種ワースト100」に入っているワカメ
 外来種対策は、そもそも生物多様性を保全するという大きな将来目標を実現するための一つの対策として、考えられているものである。

 海外から侵入した外来種による問題が昨今、多く取り上げられているが、日本も世界の生物多様性に影響を及ぼしている加害者である。