オセアニア2カ国は非常に参考になる対応をしています。

 まずニュージーランドですが、01年にオークランドの空港そばの敷地にヒアリの巣を空港関係者が発見しました。その後、ニュージーランド農務省は迅速に対策チームを結成し、殺虫剤を使ったコロニーの駆除、発見場所から1キロ圏内を定着ハイリスクエリアに設定し徹底してモニタリング、5キロ圏内を要注意エリアとして調査を行うことで03年の夏までに根絶宣言を出すことができました。この作業にかかった費用は約1億2千万円です。その後も複数回港のコンテナ内からヒアリが発見されましたが、定着前に駆除されています。

 オーストラリアでも01年にブリスベーンに定着が確認されました。ニュージーランドに比べると定着した巣の数が多く、駆除は難航しました。ニュージーランド同様、迅速にヒアリ根絶国家プログラムが発動し、6年後の07年にはブリスベーンに定着したヒアリの99%を駆除できたと発表しています。しかし、残りの1%は現存しており、いまでも繁殖の危険性はゼロにはできていません。また、14年と15年にも侵入が確認され、継続的に予算をつぎ込んでおり、この15年間で270億円を費やしています。

 この2カ国の対策の違いは非常に参考になると思います。ニュージーランドで発見されたヒアリの巣は定着後半年から1年以内と推定され、わずか1コロニーだけでした。この場合、根絶は可能でした。しかしながら、ブリスベーンでは巣は複数同時に確認され、ニュージーランドより大規模に根絶プログラムが発動しましたが、根絶できませんでした。かかった費用も約200倍以上です。いかに初期対応(定着前に発見すること)が重要か分かると思います。

 隣の台湾には04年に侵入・定着しています。台湾も国家紅火蟻防治中心(National Red Imported Fire Ant Control Center)を迅速に設立し国家プロジェクトでヒアリの根絶を進めています。08年の報告では桃園のヒアリの88%、嘉義では94%を駆除できたとしています。台湾ではヒアリ探索犬を開発するなどユニークな取り組みをしていますが、それでも根絶にはいまだにいたっていません。台湾では年間約2億円の予算を計上していました(09年当時)。

 中国も2004年に深圳市に侵入・定着し、急速に分布範囲を広げており、07年の報告では広東省、広西チワン族自治区、湖南省、福建省、江西省まで拡大しています。中国本土でも駆除対策のみならず、基礎研究を行っており2013年の論文では95本の研究論文が少なくとも報告されていることが明らかになっています。

 以上のように、これまで侵入・定着した国と地域で根絶に成功したといえるのはニュージーランドのみです。繰り返すようですが、初期対応の違いで大きく結果が違ってきます。