2017年07月12日 12:53 公開

アンソニー・ザーチャー、BBC北米担当記者

ドナルド・トランプ・ジュニア氏が11日朝に自らツイートしたメールの詳細は、「とんでもない」では済まされない。「驚天動地」、あるいは「地殻変動的」はどうか。「神々のたそがれ(Götterdämmerung)」ならぬ「ツイッター的たそがれ(Twitterdammerung)」はどうか。

トランプ米大統領の長男はおそらく、米紙ニューヨーク・タイムズがメールの内容を報道する予定だったため、先回りして自ら公表したのだろう。トランプ・ジュニア氏とロシア人弁護士の会談について同紙は9日から連日、報道と言う名の大波でホワイトハウスを直撃し続けていた。その第4波が、メールの詳細報道になるはずだった。

だとするならば、「完全な透明性」のためと自認してのメール公表ではあったが、トランプ・ジュニア氏のしたことは、他人から撃たれないようにするため自分で自分の頭を撃ちぬく行為に等しい。自分を守るための真似ではありえない。

悪評にまみれて記憶されるだろう一連のメールの中で、特に驚嘆に値する箇所が4つある。

1. 「これはもちろんとてもハイレベルでデリケートな情報だが、ロシアとその政府が大統領選でトランプ氏を応援する一環のものだ」

トランプ・ジュニア氏は当初、最初の3ページ分をツイートし、一番面白い内容がすべて詰まっている4ページ目はツイートしていなかった。まるで「歓喜の歌」のないベートーベンの交響曲第9番や、大砲のないチャイコフスキーの「1812年(序曲)」のようなものだ。

上記した一節こそが、明らかにこの4ページ目で最も注目されるハイライトだ。音楽業界の広報業者から国際的な謎の人に転じたロブ・ゴールドストーン氏は、大統領を目指していた人の息子に真正面から、ロシアが君の父さんに手を貸そうとしていると伝えているのだ。

この一節の前の段落でゴールドストーン氏は、何が提供されているのかを明記している。民主党のヒラリー・クリントン氏に関する「公式文書や情報」だ。その数行後には、クリントン氏に関する問題情報を、アシスタントのローナを通じて直接、ドナルド・トランプ氏本人に送ってはどうだろうと提案している(ローナは弁護士を雇った方がいい)。


2.「君の言う通りの内容なら最高だ特に夏の後半には」

句読点の不在が非常に目立つというのは横に置いて、トランプ・ジュニア氏がこうして返信したことから、自分がどういう事態に関わろうとしているのか、本人は完全に承知していたことが分かる。

自分の父親とホワイトハウスの間に立ちはだかる唯一の人物について、犯罪の裏付けとなるような資料をロシア政府からもらえるかもしれないとなり、よだれを流さんばかりの状態だ。

しかもこの一節の後半からして、入手情報をどのタイミングで公表できるかトランプ・ジュニア氏が考えている様子がうかがえる。

問題の会談は6月9日だった。「夏の後半」には、民主・共和両党が全国党大会を開き、党候補を指名していた。

ちなみに、民主党全国委員会へのハッキングで盗まれたメールの中でも特にクリントン陣営にとって問題となる内容が、ウィキリークス経由で暴露されたのも、「夏の後半」だった。そして複数の米情報機関は、民主党サーバーのハッキングはロシア政府の指示によるものと断定している。


3. 「モスクワからこの木曜日にやってくるロシア政府の弁護士と、君の会合を調整してくれと、エミンに頼まれた」

問題の弁護士、ナタリア・ベセルニツカヤ氏は、自分はロシア政府と関係ないと主張している。しかしゴールドストーン氏はここで彼女をトランプ・ジュニア氏に「ロシア政府の弁護士」と紹介している。

ゴールドストーン氏が話をふくらませて、トランプ・ジュニア氏に持ちかけている可能性はもちろんある。自分のクライアントのロシア・ポップスター、エミン・アガラロフ氏(アゼルバイジャン系ロシア人実業家でシンガーソングライター、父アラス氏も実業家でロシアの著名人)から頼まれた会談を実現させるため、大統領選に大影響を与える極秘会談をセッティングしているかのように見せかけ、とりあえず効き目のありそうなことを言っているだけかもしれない。

音楽業界では、もしかすると、なんでもありなのかもしれない。

だからといって、トランプ・ジュニア氏に責任はないということにはならないかもしれないが、少なくともこの点においてはロシア政府の責任は問われなくなるかもしれない。


4. 「To: ジャレッド・クシュナー、ポール・マナフォート」

一連のメールの一番上に、ホワイトハウスにとって特に気になるはずの名前が二つある。トランプ大統領の義理の息子のジャレッド・クシュナー大統領顧問と、当時のトランプ選対本部長ポール・マナフォート氏だ。

これはつまり二人とも、クリントン氏に打撃を与える「公式文書や情報」提供を申し出るというメールのやりとりの全容を受け取った上で、翌日に問題の会合に出席したことを意味する。

(英語記事 Four explosive lines in Trump Jr emails