2017年07月14日 10:53 公開

中国政府を批判し有罪となり、服役中にノーベル平和賞を受賞した作家で人権活動家の劉暁波氏が13日、肝臓がんのため中国遼寧省瀋陽の病院で亡くなった。61歳だった。国外での治療を認めなかった中国政府に対して、国際的な批判が高まっているが、中国政府はこれに反発している。

劉氏は中国の民主主義体制移行を訴えたことを理由に、2009年に国家政権転覆扇動罪で懲役 11年の判決を受けた。末期の肝臓がんを患い、先月から瀋陽の病院で治療を受けていた。

中国外務省は14日、政府として初めて劉氏の死亡に触れ、「劉暁波の件の扱いは中国の内政問題であり、外国は不適切な発言をする立場にない」とコメントした。国営・新華社通信が同日伝えた。

耿爽報道官はさらに、中国の医療当局は劉氏の治療に全力を尽くしたと付け加えた。

劉氏が亡くなった13日夜、入院先の中国医科大学付属第一病院が開いた記者会見で、主治医のテン・ユエエ氏は、劉氏が妻の劉霞氏や家族に囲まれ「安らかに」息を引き取ったと説明した。妻への最後の言葉は「君はしっかり生きて」だったという。

瀋陽市当局は短い声明で、劉氏を治療しようとしたものの、多臓器不全のため死去したと発表した。

出席した主治医は、劉氏が死去の際に妻の劉霞(リウ・シア)氏(56)に伝えた言葉を明らかにした。劉氏は息を引き取る時は劉霞氏や家族らにみとられ、安らかな表情だったとした。

ノルウェー・ノーベル委員会は、劉氏の死去に中国政府は「重い責任を負う」とコメントした。同委員会は、劉氏の死去は「早すぎる」と指摘し、国外での治療を認めなかった中国政府の態度を「非常に気がかりだ」と批判した。

劉氏の引受先として検討されていたドイツのジグマル・ガブリエル外相は、移送が実現しなかったことが残念だとコメント。「中国は今や、もっと早くにがんを発見できなかったのか、透明性を確保し説得力のある回答を素早くする責任がある」と外相は付け足した。

治療のため刑務所から仮釈放され、瀋陽の病院に入院した劉氏のもとには8日、ドイツと米国の医師が診察に訪れ、緩和治療のための出国は可能だが「できるだけ早く」行う必要があると共同声明を発表していた。

劉氏の妻で詩人の劉霞氏は自宅軟禁処分を受けている。米、英、独、仏の各国政府は、この処分を解き、劉霞氏が希望するなら出国を認めるよう中国政府に呼びかけた。

ボリス・ジョンソン英外相は声明で、「劉暁波氏は海外で自らの治療方法を選択する機会を与えられるべきだったが、中国当局はこれを繰り返し拒否した。これは誤った判断で、妻に対するあらゆる制限を解くよう呼びかける」と中国政府に対応を促した。

同様に、ザイド・フセイン国連人権高等弁務官も、中国政府に「劉霞氏の行動の自由を保障」するよう呼びかけた。

「西側の被害者」 中国メディア

欧米では劉氏の功績をたたえる声が溢れており、ドナルド・トランプ米大統領は劉氏を「民主主義と自由の追求に人生を捧げた」、「勇気ある活動家」だと呼んだ。

一方で中国の国内メディアは大方沈黙しているが、国営・新華社通信と中央電視台ニュースは英語版サイトに短い声明を掲載し、「国家権力の転覆をはかり」有罪となった劉暁波氏が死去したと伝えた。

中国共産党機関紙「人民日報」の国際版、「環球時報」は、劉氏は欧米のせいで「道を踏み外した被害者」だと書いた。

「中国側は劉氏の治療に専念していたが、一部の欧米勢力は常に問題の方向を政治的なものに変えさせて、治療を『人権』問題にしようと騒ぎ立てた」と同紙は続けた。

ソーシャルメディアでは、劉氏追悼の書き込みが削除されている様子で、複数の追悼コメントが削除された。「RIP(安らかに)」という表現や、追悼を意味するろうそくの絵文字が使われているコメントも削除されている。

ノーベル平和賞授賞式には空の椅子が

大学の教員から不屈の人権活動家となった劉氏は、中国政府にとっては犯罪者で、繰り返し投獄された。

1989年に中国で民主化運動が活発化すると、米国から帰国。6月の天安門事件では軍との交渉役など中心的な役割を担い、「反革命罪」で投獄された。

1991年に釈放後は、天安門事件で投獄された活動家たちの釈放や犠牲者の名誉回復を求めて運動。そのため3年間、強制収容所に入れられるが、1996年には獄中で詩人の劉霞氏と結婚した。

釈放後は、文筆活動を続け、中国の民主化を求めた。

北京五輪が開かれた2008年、中国の民主主義体制移行をインターネット上で呼びかける「08憲章」を、複数の知識人と共に起草。一党独裁の廃止と複数政党制の民主主義導入を呼びかけた。大勢が賛同したが、中国当局は劉氏を国家政権転覆扇動容疑で逮捕。2010年に懲役11年の実刑判決が確定して以来、劉氏は遼寧省の刑務所に収容されていた。

(英語記事 Liu Xiaobo: China criticised over late dissident's treatment