なぜインスタグラムに狂う女子が爆発的に増えたのか

『鈴木朋子』

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鈴木朋子(ITジャーナリスト)

 「インスタグラム」の勢いが止まらない。インスタグラムとは、写真や動画を共有するSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)だ。ニールセン デジタル株式会社が2017年3月に発表した「SNSやコミュニケーションアプリ」の利用状況によると、国内のユーザー数は1294万人。2016年5月発表の同社の調査によると、2015年から2016年にかけての増加率は84%で1092万人と、その後も着実にユーザー数を拡大していることがわかる。

 特に特徴的なのが、若い女性からの支持だ。性年代構成を見ると、インスタグラムの30%が18歳から34歳までの女性であり、LINEやフェイスブックとは明らかに異なるユーザー属性を持つ。
インスタグラムの画面
 若い女性たちのインスタグラムに対する熱意はすごい。彼女たちは「インスタ映え」(インスタグラムに投稿すると注目を集められる写真)を求め、インスタ映えするスイーツを提供するカフェに長時間行列する。インスタグラム上で人気な人は「インスタグラマー」と呼ばれ、その生活スタイルは憧れを呼び、愛用品を入手するファンも多い。そんな彼女たちをターゲットに、飲食店は撮影用の壁や照明を用意し、インスタグラムによるクチコミ効果を狙い、女性誌は自撮り用のライトを付録に付け、「いいね」をもらえる写真の撮り方や加工のコツを紹介する大特集を組んでいる。

 ここまで若い女性を熱狂させているインスタグラムとは何なのか。

 インスタグラムは前述の通りスマートフォンで画像や動画を投稿し、コミュニケーションをとるSNSで、写真全体の色味を変更したり、トリミングや回転といった基本的な加工機能を持つ。好きなアカウントを「フォロー」すると、自分のホーム画面に投稿が表示されるようになる。投稿主とは「いいね」やコメントで交流することができる。

 実はインスタグラムは最近始まったサービスではない。2010年にアメリカのベンチャー企業がiOS用のアプリをリリースしたのが始まりだ。色調や彩度などを簡単に加工できる「フィルター」機能を持ち、スマートフォンで撮影したスナップ写真が作品として生まれ変わる点が写真愛好家の支持を集めていた。その後、フェイスブック社に買収され、正方形に限定されていた画像も長方形で投稿できるようになるなど、時代に合わせて機能を拡張し続けている。
「盛れている」写真の裏側

 近年のSNS動向を見ると、テキストでの交流から画像や動画による交流への移行が顕著だ。インスタグラムは初めから写真をベースにしており、時代が追いついたといえるかもしれない。さらに、海外の「セレブ」と呼ばれる女優やモデルが愛用し、日本の芸能人へと広がったことも流行した要因だろう。

インスタグラムの投稿
 インスタグラムでも写真や動画に文章を付けることができるが、長文を投稿するユーザーはまれだ。「ハッシュタグ」という検索しやすくなるキーワードを付けて投稿する。鎌倉で撮影した海の写真なら「#鎌倉」「#sea」といった具合だ。ハッシュタグをタップすると、同じハッシュタグを付けている投稿が一覧表示される。フォロー関係にないアカウント同士でも、ハッシュタグ経由で投稿を発見し、「いいね」を通じて自然な交流が生まれることもある。

 若い女性はハッシュタグをいくつも付ける傾向がある。先の例で言えば、場所や名称のハッシュタグだけでなく、「#今年初めて」「#靴のセレクト失敗」「#ほんとは暑くて帰りたい」などと10個程度並べる人も少なくない。検索による投稿閲覧を目的にしているのではなく、個条書きのように書けば文章にするよりも簡単に思いを伝えられるからだろう。

 彼女たちがインスタグラムに投稿するのは、「盛れている」一枚だ。「盛れている」とは、現実よりもかなり良く写っている状態のこと。盛れていない写真は、インスタグラムの加工機能や別の写真加工アプリを駆使して、最高の一枚に仕上げる。「インスタ映え」するとされている、カラフルなスイーツや生クリームたっぷりのパンケーキ、海外ブランドのコスメ、セレクトショップの雑貨などの投稿が多く、真上から撮影している写真が多くみられる。

 自撮りを載せるときは、盛れる角度を探して何十枚もの写真を撮る。最近の流行は、「SNOW(スノー)」などの自撮りに特化したアプリで撮影した写真だ。自撮りアプリで撮影すれば、顔に動物のスタンプを施して目を大きくするといった、誰でもかわいらしくなる加工ができる。あからさまな加工を避けたければ、さりげなく美肌にし、顔の輪郭をすっきり整えるアプリもある。

 インスタグラムに投稿した写真は自分のプロフィル画面に並ぶため、数日前に投稿した写真が気に入らなくなったら、躊躇(ちゅうちょ)なく削除する。インスタグラムには常に自分のセンスが光るキラキラした写真のみが表示されるのだ。

 しかし、これでは「今」を共有できるこの時代においてタイムラグを感じるし、少し窮屈でもある。そこで多用されているのが「ストーリー」機能だ。
インスタはマックよりスタバ?

 「ストーリー」は、24時間で投稿が自動的に消える機能だ。「エフェメラル」と呼ばれるこの機能は、海外で人気を集めた「Snapchat」というSNSに早くから採用され、2016年にインスタグラムもこの機能を追加した。若い女性にとって盛れている写真しか投稿できないインスタグラムだが、知り合いと繋がっている以上、たまには普段の自分も共有したい。そこで、自動で消えることで写真が残らず安心なストーリー機能を使うのだ。

 ストーリーには、静止画と動画が投稿できる。画像を文字やスタンプで飾ったり、他のアカウントへのリンクを設定する機能もある。

 ある女子高生は「スターバックスに行ったらインスタに投稿するけど、マクドナルドはインスタに投稿できない。でもストーリーならマクドナルドもあり」と言っていた。友達とマクドナルドでおしゃべりしている様子を他の友達に中継するために投稿することもあるそうだ。
 他にもストーリーには、インスタグラムらしからぬ投稿が行われる。黒い背景に愚痴をずらずらと書き連ねた画像や、彼氏とイチャイチャしている動画などだ。「消えるから」と投稿するのだが、投稿を見た人がスマートフォンの画面を撮影すれば、自分の知らないところに画像が残ってしまう。そのリスクは想像できるはずだが、それでも発信したい気持ちが勝つのだろう。

 実のところ、清らかな印象のインスタグラムにも怪しい投稿はある。セミヌードや性的なイメージを想起させる画像や動画、風俗店のアカウントといったアダルト系だ。ただしインスタグラムの規制は厳しく、ガイドライン違反をしたユーザーのアカウントはすぐに停止される。

 また、「ステマ(ステルスマーケティング)」の問題もささやかれている。若い女性は商品を購入するとき、検索エンジンでWebサイトを検索するのではなく、SNS内を検索することが多い。特にファッショングッズやコスメに関しては、インスタグラムの投稿を参考にする。100円ショップで買えるコスメの使用感やモデル以外の人が着ている洋服など、通常の通販サイトでは見られない写真やクチコミが見られるからだ。インスタグラムでフォロワー数の多いアカウントを持つ人は「インフルエンサー」とも呼ばれ、美容系のサプリやグッズを紹介することで購買促進に影響力を発揮するのだが、企業からの宣伝依頼であることを隠して投稿している「ステマ」もあるという。

 この問題にもインスタグラムは積極的に取り組んでいる。インフルエンサーがスポンサー企業の商品を投稿するとき、「XXX(ブランド名)とのタイアップ投稿」と表示される仕組みを提供することが発表されている。現状は少数のクリエイターや企業に限定して提供されているが、今後ガイドラインの公開とともに提供を拡大していく予定だ。

 おしゃれな女性誌を自らが編集するように楽しめるインスタグラムは、若い女性が憧れる世界の投影だ。いつまでも夢が続くように、今後も安心で健全な運営を期待したい。



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