そして、今のトレンドは、「より自然に盛る」ことらしいですよ。例えば最近、自分の後ろ姿を写真に撮ってインスタグラムに載せる子をよく見かけますよね。そこに街並みの全体も見えて、路上の店舗も映り込んでいて、おしゃれな世界観をなにげなく自然に見せてね。でも、よく考えたら自分のページに自分の後ろ姿が載っているのは、すごく不自然じゃないですか。道のどこかにスマホを置いて、カシャッと撮っているわけだから。ただ、写真だけパッとみたら、本当は不自然だけど、なんとなく自然な写真に見えてしまうんです。
 どうして間接的に自慢したがるのかといえば、それは日本特有の文化だと思いますよ。海外でも間接自慢の写真はあるかもしれませんけど、基本的に海外の方が階級や階層などの格差が当たり前のようにあって、自慢は悪いことじゃないからこそ、やんわりとした表現はあまり使わないんです。

 その一方で、日本はなんとなくみんなが平等じゃないといけない雰囲気があって、直接自慢するやつは嫌なやつ、という島国根性、ムラ社会的な文化があるじゃないですか。だからこそ多くの人が間接自慢をやりたがるんです。直接は言いにくいからね。

 とはいっても僕はインスタグラムをわりと肯定的に見ているんです。たしかにうがった目で見ると気持ち悪いかもしれません。ただ、人生は必ずしもいいことばかりじゃなく、能力もないしお金もないし自信もないし、という人がたくさんいるんです。そういう人が写真を投稿して、たった10個の「いいね」をもらうだけで、心がちょっとホッとするならそれはそれでいいのかな、と思います。人に認めてもらうことで、いろいろなものを維持できる人が世の中にはたくさんいますからね。ある意味で心のセーフティーネットになっているならいいことじゃないですか。

 そのためだけに写真を撮る、ということを「病んでいる」とみるか、肯定的な見方をするか、それはどちらも間違っていないと思います。ただ、インスタグラムはツイッターと違ってリツイート機能がない分、炎上もほとんどなくて、最も平和なSNSといえます。LINEだって既読になっていないとか、既読スルーとかでもめたりしますよね。人の結婚式で悪口が言えないのと一緒で、インスタグラムはきれいな写真を載せることが多い分、きれいな場所はそんなに荒れませんからね。今までのSNSの中では一番良質で、誰も傷つけないのがインスタグラムだと思いますよ。

 インスタグラムを使う若者たちをおじさまたちは受け入れられないかもしれません。でも、それは自己表現するツールが変わっただけで、昔の人が同じものを持っていたら同じことをしていたはずです。いつの時代もそうでしょう、もし江戸時代に車があったら、遠くまで行けるようになることで人々の行動や生活が劇的に変わるじゃないですか。おじさま世代にとってSNSはバーチャルであって、意味のないものに見えるかもしれないけど、実はモータリゼーションと同じくらい大きなことかもしれないと僕は思いますね。

(聞き手 iRONNA編集部、中田真弥)

はらだ・ようへい 1977年、東京都生まれ。慶応大卒業後、博報堂に入社。現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。多摩大非常勤講師。近著に『新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動』 (朝日新書)など多数。