若年層の投票率は、「年齢の数字」と大差ない、とよく言われる。つまり25歳の投票率は25%前後、という意味だ。実際、2014年2月に行われた東京都知事選挙では、「20-24歳」の投票率はわずかに25.7%、「25-29」では28.38%に過ぎなかった。

 第23回参議院通常選挙(2013)では、「20-24歳」の投票率は31.18%、「25-29歳」では35.41%と、軒並み60%を超えてくる50代以上の中・高年とくらべて、明らかに低いのが実態だ。

 このことを踏まえて、「若者の政治離れ」とか、「若者の政治意識の希薄化」が叫ばれて久しい。まずこの前提が本当なのかどうか、疑ってみよう。

 次のグラフは、公益財団法人「明るい選挙推進委員会」が公開している、年代別の「衆議院議員総選挙年代別投票率の推移」(http://www.akaruisenkyo.or.jp/070various/071syugi/693/)である
 
 これをみても分かるように、若者(特に20代)の投票率は、過去(1960年代)とくらべて、長期的に明らかに低下しているのが分かる。しかし注意しなければならないのは、全年齢における投票率は、過去から現在まで、ゆっくりと長期低下(特に平成期)している、という事実だ。

 つまり、「投票しないこと」を「政治離れ」と定義するなら、「日本人全体の政治離れが進む中、特に若者についてはその度合いが大きい」という風に解釈するべきだ。

ところが一方で次のような統計もある。日米英仏韓の主要5カ国の青年(18-24歳)のそれぞれ各1000人を対象に実施した国際的な意識調査である「世界青年意識調査」の最新統計(第8回・内閣府)によると、政治に「非常に関心がある」は日本=11.7%で、米国=16.4%に次いで高い数値であり、政治に「まあ関心がある」と合わせると日本=57.9%で、主要5カ国の中で最高であった(最低は英国の32.2%)。


 このように、日本の若者は「政治には比較的強い興味を持っている」が、しかし「実際の投票行動には繋がっていない」という実態が浮かび上がるのである。

 ここからは、「若者の政治離れ」ではなく、むしろ「若者の投票行動離れ」という現実が判明する。どうも、若者が政治に関心がないから投票所に行かない、のではなく「政治に関心はあるが、投票所には行かない」というのが正解に近いだろう。この原因は、まったく制度的な原因に求められると、私は考えている。

 つまり、選挙システムそのものが、若者の要求に答えていないのではないか、という疑問が浮かぶ。例えば地方から上京して、一人暮しをしている大学生が投票行為に及ぶ場合、住民票の所在地に投票権利を有するため、一人暮しをしている(生活実態のある)現住所では投票ができず、住民票上の自治体の選挙管理委員会に「遠隔地投票」の手続きを申請しなければならない。

 この手続は至極煩雑で、自治体によっても異なるが郵送によって申請しなければならない場合が多い。実際、私もこの制度を利用して遠隔地に投票したことがあるが、選挙管理委員自身も不慣れな場合も多く、書類をたらい回しにされ、危うく投票そのものの意欲が無くなりそうになった。

 私が大学生だった時代、周囲の友人・知人の中で「政治には関心があるが投票所には行かない」という人間の、ほとんどすべての理由がこの「遠隔地投票」である。わざわざ元住所の住民票を請求したり、地域の選挙管理委員会に申請用紙を請求したりするのは、よほど奇特な人物ではない限り行わない。この硬直したいわば「住民票主義」のようなシステムを正し、生活実態の存在する自治体で投票行動が可能になるように、法改正するだけで、若者の投票率は随分と変わってくるだろう。

 更には、硬直化した投票日や投票時間の問題がある。普通、投票日は日曜日の朝から夜の8時までであるが、それは「週末が休日であることが前提の、模範的な勤労者(サラリーマン)」のライフスタイルを中心とした考え方である。

 これだけ非正規雇用が拡大し、若者の多くが親からの仕送り額の減少などに悩み、アルバイトなどを兼任している現在、若者のライフスタイルは多岐に及んでいることから、投票曜日と時間は拡大されて然るべきだ。
 投票日数を二日間などに拡大し、24時間に近い形で開放すれば、これも若者だけではなく、全年齢において投票率は格段に向上するだろう。あるいは投票日を祝日にすることなど、法で別途定めるようにしても良い。

 投票所の多くは市役所や小・中学校に設置されているが、地の利の不便な場合もある。可処分所得の減少で格差の犠牲になりがちな若年層は、必然自家用車の保有率が少なく、投票所への来所はかえって困難な場合もある。小・中学校の多くは、駅から遠い住宅地の中にあるからだ。

 よって、既存の公的施設を転用した臨時投票所の増設や、空港や駅などJRや私鉄、航空会社と連携した投票所開設も有効ではないか。各所に電子認証端末を設置し、住民基本台帳カードによる本人確認が普及すれば、やはり投票率は劇的に改善されるだろう。

 現代人のライフスタイルの多様化は、明らかに現行の投票制度から齟齬をきたしている。通販サイトで注文した商品がその日に届くことが当たり前になりつつある中で、投票システムだけは何十年も前の、ハガキ持参と鉛筆書きという、旧態依然としたものに留まっている。これだけ実態と制度が乖離しているのに、それが投票率に作用しないと考えるほうがおかしいと思う。

「週末が休日であることが前提の、模範的な勤労者(サラリーマン)」という、日本人の生活や働き方のスタイルは、過去のものになりつつある。その証拠に、「期日前投票」の利用者総数は、選挙の毎に拡大の一途をたどる傾向がある。「日曜日に、決められた場所に、決められた時間に行くことができる人間」は、この世界の中でどんどんと減っている。

 その変化に、システムは全く対応していない。「模範的な勤労者」が存在することを前提とした日本のシステムの弊害は、選挙制度にとどまるものではない。年金や健康保険など「模範的な勤労者」が強固に存在した時代に想定された制度の多くに、歪や問題が指摘されているのは周知のとおりである。

 住基カード1枚を持って、ふらりと東京駅で投票してから、道後で温泉に浸かりながら選挙速報を観る。そのような時代が到来した時、「若者の政治離れ」というフレーズは消えてなくなっていることだろう。