斎木陽平(A0義塾塾長)
1992年生まれ。福岡県出身。慶應義塾大学法学部政治学科へFIT・ AO入試で合格。卒業後、慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻課程へ進学。2011年にAO入試専門塾「AO義塾」を設立。初年度から圧倒的な合格率でAO入試合格者を多数輩出し、「日経ビジネス」誌が選ぶ「各界で活躍する平成生まれ30人」に香川真司選手や石川遼選手らと共に選出される。また、「新しい時代に、新しい教育を。新しい時代に、新しい夢を。」をテーマに2013年、「一般社団法人RE:VISIONリビジョン」を設立。高校生の夢や想いが社会的に評価される場所を創るため、精力的に活動を続ける。著書に『AO入試を受ける前に知っておいてほしいこと』(エール出版社)がある。

山本:今日はよろしくお願いします。まずは斎木さんと私との関係ですが、斎木さんは大学の先輩にあたります。いまは慶應の大学院一年目でいらっしゃいますけど、大学在学中から若者の政治参加に関する多くのムーブメントを起こした方でもあり、「若者と政治」を語る上では欠かせない存在だと私は思っているので本日対談をお願いしました。

斎木:こちらこそ、よろしくお願いします。

生活満足度が高い若者たち


山本:さっそく内容にはいっていきましょう。「若者と政治」と言えば、いまの若者は政治関心が薄いとよく言われますけど、どう思いますか?また、政治関心は高めるべきか否か、政治関心の意義について意見をお聞かせください。

AO義塾塾長の斎木陽平氏
斎木:おそらく、若い世代は関心度は低いと思います。しかも日本のみならず、ヨーロッパやアメリカなど先進国においては若い人の政治に対する関心度は低い状態が続いています。慶應の出身者である古市憲寿さんが著書で指摘されていますけど、若者は生活満足度が高いと。治安もいいですし社会インフラも整っていますし、バイトもできています。日本の若者の生活満足度って他国と比較しても相当なものだと思うんですよ。もちろん、貧困率だったり色んな問題はあるにせよ、相対的にみると生活満足度はかなり高い。「変えたい!」という思いが政治への参加に繋がるけれど、 だとすれば、政治に対する不満が少ないから、変革への原動力がやっぱりない部分があると思います。だから若者の政治関心をすぐに高めることは、なかなか難しいことなのかもしれない。

山本:いまは満足度が高いという話でしたけど、むしろ逆で、私が大学生として周囲の友人をみていると若者の貧困が激しいと感じるんですね。例えば私の兄も大学生なんですけど、月末には一週間を70円でやりくりしてたんですよ!(笑)

斎木:まあ、そういう大学生もいますよね〜

山本:はい、だから満足度よりむしろ、恋愛を含めて自分の日々の生活に一生懸命にならざるを得ない環境があるからこそ政治まで及ばないんだと思います。

斎木:あとは、満足度に加えると「悟り世代」と言われますよね。高い目標を掲げられない空気があるんじゃないですか。情報も検索すれば何でもでてくるし、何かこう、ワイルドというよりマイルドになっていて、しかも高い目標を掲げたら笑われるわけですからね。「意識高い(笑)」って感じで。

山本:斎木さんは、そういう意味では笑われるほうなんじゃないですか?

斎木:う〜ん、そうなんですよね。だから意識高いと言っても、「自意識の高い人」と「社会への意識の高い人」でわけるべきなんですよ。ちょっと話それちゃいましたね。とにかく、政治関心の薄れは先進国では共通していることで、投票率って世代別でみると右上がりじゃないですか。これは加齢効果といいますけど、社会を通して結婚など色んな経験をして、より社会や政治との結びつきが深まるほど政治への関心は高まっていくわけですよ。
だからある意味、若い人は社会との交わりを感じる環境も同時に少ないですから、先進国全体に言えることですけど、若者が関心を持たないことは当然の結果でもあると思います。ただ!その次を考えるときに、(政治に関心を)持たなくていいか、というと、そうではないと思う。というのは、トマス・ジェファーソンは「教育なき民主主義は無意味である」という言葉を遺しましたように、しっかりと政治教育をしていかないと。若い人たちが政治から離れてしまうと全体として代議制民主主義そのものの根底が覆りかねない。この前の総選挙も50%代でしたよね。これが下回ってしまうと、つまり国民の半分も参加しない選挙によって唯一の立法機関である国会の議席数が決まってしまうことになる。すると議会制民主主義の根幹そのものが揺らぎかねないと思います。だから若い人に政治に参加してくださいと言ってもなかなか難しいとは思いますけど(笑)

日本のなかで政治教育をする仕組みを


山本:「教育なき民主主義は無意味である」と言いましたけど、ということは教育ありきの民主主義ということですよね。その点はどうですか。いまは教育はされた上で民主主義が成り立っているとお考えですか?

斎木:僕はほぼないと思っています。僕らみたいに政治学科に在籍していれば別ですけど半強制的に政治の勉強をする環境はないわけです。義務教育を見渡してもなかなかありませんし、高校教育をみてもどうしても政治的中立性が重視されて、政治教育はされていません。むしろ先生が政治の話題をすることはタブーですよ。

山本:どうしてもイデオロギーの話が日本では起こりやすいからですか?

斎木:そうですね。そういう部分もあると思います。ただ正直に言って「日本だから」といったわけではないですよ。先生によってイデオロギーはあると思います。例えば、イデオロギーのある教育を受けた結果、みんながそのイデオロギーに染まるかと言えばそうでもないでしょうし、ある意味そのイデオロギーを利用して中立性を説く工夫はできるわけですよね。だからそのためのガイドラインをつくっていって、同時に日本のなかで政治教育をする仕組みをつくっていくことが大切だと思います。つまりイデオロギー教育になってしまうリスクよりも、政治教育をしないことのリスクが大きいのに、イデオロギーというリスクに気を取られているというのが現状です。

山本:なるほど。まあ、イデオロギーに気を取られないという発想自体もまたイデオロギーですけどね〜(笑)お話を聞くと、結局(政治の)教育がないということじゃないですか。ではどういった教育を展開していくべきだと考えていますか?

斎木:まったくないとは言い切れませんがほぼないと思います。

山本:それこそ、アメリカでは政治教育は徹底しているという話があるじゃないですか。模擬投票や模擬選挙がアメリカにはあるとのことでしたけど、日本でもそれらを導入すべきなんですか?

斎木:僕は、模擬投票は素晴らしい教育のコンテンツだと思います。やっぱり政治教育をするならば模擬投票が一番だと思います。実際の選挙をみていくことは、教育を受ける側にとっては一番おもしろいと思います。正解のある話ではないので、各党の政策をみたときに「あ、自分はこれがいいな」と思うところからスタートすることは日本でも取り入れていったらいいでしょうし、模擬投票ならば先生のイデオロギーも入りにくいと思います。やはり中立的に、そこには色んな仕組みが必要でしょうけど、模擬選挙を通して体感型の政治教育をしていけばいいのではないでしょうか。

民主主義の究極的目標は弱者救済


山本:そのお話には、斎木さんがよく言う市民的公共性が前提にあるんですか?

斎木:その先に、市民的公共に対する視野が僕のなかではあります。模擬選挙をやったり政治教育をする人たちの全てが市民的公共を最終的に目指しているわけではないでしょうけど、私は市民的公共の意識は強くあります。

山本:ちなみに、市民的公共について一度整理をしたいです。私はあまり詳しい分野ではありませんので(笑)市民的公共というのは、教養ある市民が議論することで世論を形成して、その世論が行政を監査する、といった認識で大丈夫ですか?

斎木:そうですね。つまり、公共の担い手となる市民一人ひとりが討議に参加していく。その教養ある市民がね。だからこそ、教育なき民主主義は無意味であるわけですよね。教養ある市民が討議に参加して、監査したり、いまならNPOやNGOを立ち上げることによって公共の担い手になることも可能になってきていると思います。

山本:その、つまり政府が動くだけではなくて市民自体が積極的に参加をして社会を形成していくっていうこと?

斎木:そういうことだと思います。

山本:要するに政府の手が行き届かないところで市民が活動していく必要があるっていう認識だと思うんですけど、そのなかで必要になってくるのが教養だったりするわけですよね。だから教育で補っていかなければいけないはずでありながら、現状ではカバーしきれてないように私は思いますが、その点はいかがですか。

斎木:政治教育は先ほど言った通り日本では盛んにおこなわれていないですね。やっぱり僕が思うのは、政治や公共とは、社会の構成員みんなに関わるものだと思う。ルールを決めたりね。それから、僕は政治、とりわけ民主主義の究極的目標は弱者救済だと思っています。強い人は市場の原理で政治が介入しなくていいわけですよ。民主主義の究極的目標はロック・ルソー以来の自然権という根本的な理念だと思います。僕は別に西洋かぶれじゃなくて、日本にしても古くから神道や仏教がありますけど、仏教の法然の言葉を借りれば「みんなが幸せになるために生まれてきた」、つまり幸せを追求するために生まれてきた、というのは日本でも普遍的な考え方でした。これは日本の伝統であると思うと同時に、西洋においても同じだったんですよ、昔から。つまり結局何が言いたいかというと人間が生まれながらにして生命・自由・財産をもっている、幸福を追求する権利があるということ。そして今の日本国憲法の根本的価値は第13条の幸福追求権ですよね。そこで重要なのが、幸せではない人たちを救済することによって、みんなが幸せになるという目的の達成ができます。幸せでない人たちに、公共によってアプローチをしていくことが大切です。

山本:ただ、その公共を考えた時に、最初に戻りますけど「教養ある市民による良質な議論」、これによってマイノリティの排除という議論もありますよね。結局教養ない市民は排除されるわけですから。

斎木:教養ある市民の定義が難しいですけど、民主主義の究極的な目標を理解していることが大前提だと思います。日本国憲法は日本の根幹であり、その根本的価値と言われるのが13条。それを考えると、民主主義の討議のなかでは一番の大前提ですから、やはり「教養ある」にはここが含まれているでしょう。そうすると、教養ある人たちが教養ない人たちを排除する、っていうのはその大原則に反してますよね。

山本:ちなみに衆愚政治についてどう思いますか?

斎木:私たちは、この(13条の)大前提を理解できていなかったり学ぶ機会がありません。だって、「日本国憲法の根本的価値と言われる条文は?」というのは、(学校教育では)あまり扱わないですよね。結局、その意味や成立背景を学ばないわけですよ。この教育がないために、衆愚政治に陥ったり、集合愚に陥ったり、インターネットの炎上もそうかもしれませんけど(笑)私はやはり、そのところをしっかり教育によって補完する必要性は必ずあると思っています。

今一度の『学問のすゝめ』


山本みずき特別編集長
山本:私たちは慶應義塾大学で学んでいる立場ですけど、今日も『学問のすゝめ』を改めて読み返していてね…(斎木さんに遮られる)

斎木:福澤諭吉先生ね!結局、福澤諭吉先生の時代は近代がはじまったとき。近代とはロック・ルソーの考えがまさに日本にはいってきた時代です。そのときに、福沢諭吉が説いたのが『学問のすゝめ』ですよ。「一身独立して一国独立す」、これは独立不羈の考え方ですけれども、やっぱり一人ひとりが学問してこそ国家が独立する。当時は国家の独立が至上命題だったと思いますが、今はやはり(日本は)独立国家として成り立っているわけですよね。細かい点はおいて、独立国家として危ぶまれることは喫緊ではない。では、何がいま大切かと言うと、成熟した民主主義ですね。これから社会の在り方をどうすべきか考える時に、まさに今、福澤諭吉の言葉が再び意味をもってくると思います。誰がエリートだとか、一部の人間だけが決めるのではなく、できるだけ多くの人々が参画して社会の在り方を決めていく必要があります。当時は独立のために学問だったと思いますが、これからは社会の在り方を、民主主義をどう成熟させていくかを考えるための、今一度の『学問のすゝめ』ですよね。

山本:そうそう、それでね、市民的公共っぽい記述が『学問のすゝめ』にあったので是非紹介したいんですけど。第四篇では「国民の気風が国を作る」という項目がありましたね。そこにはこう書かれています。「狭い意味での『政治』をなすのは政府だけれども、世間のあれこれの事業の中には、政府が関係しないものも多い。一国全体を整備し、充実させていくのは、国民と政府とが両立して、はじめて成功することである。われわれは国民としての責任を尽くし、政府は政府としての責任を尽くしてお互いに強力しあい、日本全体の独立しなくてはならない」と。まさに斎木さんの提起した内容そのもだと思いました(笑)福澤諭吉先生も論じていたんですね。

斎木:いやいや!福澤諭吉先生が論じられたことを私が勝手に解釈しているので、僕が論じているどうこうではありませんけど(笑)福澤諭吉先生は、だからこそ日本の貨幣の肖像に二度も選出されるわけですね。二度、選出されるのは福澤先生だけですよ。やっぱり慶應義塾大学の誇りでもありますけど、日本人としても誇りです。

山本:私も同じ思いであります(笑)最後に、いままさに総選挙があっているわけですけど、選挙に対して若い世代である斎木さんから一言お願いします。

斎木:とにかく、参加して欲しいです。とにかく一票を投じて欲しいし、少しでもいいから考えて欲しいです。情報を収集しやすいのはインターネットの良い部分ですし、調べればすぐに政党のマニフェストも見られるわけです。あとは政党マッチングを試すこともできますし、それも含めて色んな情報収集をインターネットや本、街頭演説を少し聞いてたりして自分のなかで何となくでいいから参加してほしい。たしかに自分の思想と照らし合わせたり、真面目に選挙に取り組む人もいますけど、30代40代以降の人でも何となくで参画している人もいます。それに何と言っても!初体験なわけですから(笑)参加してみることが大事で、どれが正解かではなく、自分なりの答えでいいわけだから気負いせずに参加してみてほしい。僕自身が偉そうにお話してしまいましたが、それこそ僕はまだ学んでいる立場です。皆さんからも多くのことを学んでいきたいですし、私も自分なりの確信があって投票できているわけではありません。そういう意味でも是非皆さんには参加して欲しいと思います。

山本:実は私はまだ19歳なんですよね(苦笑)しかも今回選挙には参加できないし、(投票の)初体験すらまだっていうところなんですよ。そのなかで、選挙権をもっている人たちが、自分たちがもっている権利を行使しないっていうのが勿体無くて仕方がない。もうね、 選挙に参加できる方々が羨ましい限りですよ。だから、今回せっかく機会があるわけですから、一国民としてこの国をどうしていくか考える上でも選挙権をお持ちの方々には行使していただきたいと思います。

斎木:そうですね。若い人が投票にいかないと、どうしてもシルバーデモクラシーになっちゃいますから。

山本:是非、選挙には参加を!

斎木:とくに若い人は!僕も含めて。笑 今回色んな話がでましたけど、私はまだまだ未熟者であり、学んでいる途中なので、暖かく見守っていただきたいなと思っています(笑)自分自身も正すべきは正して、反省すべきは反省していくつもりです。今回は山本さんとお話できて、後輩とは思えないほどしっかりされているので学びも多かったですし、今後も学び続けていきたい思いです。

山本:いえいえ。斎木さんとは今年の夏に一緒に講演して以来、何かと関わりがあるんですが、来年の4月にも愛知で一緒に講演する予定があったりと、今後もそういう機会が増えてくると思いますので、どうか皆様、応援のほどよろしくお願い致します。

斎木:ほんとうに期待の後輩です(笑)

山本:いやいや、ほんとうに期待の先輩です(笑)というわけで今日はありがとうございました!