さすがに全巻・全セリフの入力と分析は不可能だったので、おおよそのワンピースという漫画の性格が固まってくるとされている第1話からアラバスタ編までの全セリフをデータ化し、テキストマイニング(文章解析)して分析してくれた結果である。テキストマイニングの技術や入力ルールの詳細は省くが、この主要メンバー3人にどのような言葉が多く使われているかを数え上げていくと、「海賊」「仲間」「船」「偉大なる航海」など、いかにも「ああ、ワンピースらしいなぁ」という言葉が頻出している。ところが、意外なことに頻出ランクが高いのが「バカ」という言葉なのである。

 バカと相手に言える強さ、そして、それ以上に、バカと言われて、それを受け止められる力の問題である。京都や大阪では「アホ」といわれるのは愛情を感じるが「バカ」と言われると腹が立ち、東京では「バカ」と言われるのは耐えられるが、「アホ」と言われると腹が立つという俗説があった。これも上方芸人たちの活躍で、関東と関西での受け入れられ方はかわりつつあるようにも思う。

 話を元に戻そう。ここで述べておきたいのは、関東・関西を問わず、礼儀作法は当然のことであるが、時には互いに「バカ」と言い合える余地や余裕も、組織における上下関係、リーダーと部下との間にあっても良いのではないか、ということだ。ただ「バカ」と言っただけでパワハラだと解釈されるような隙間のない組織やコミュニティーは、互いの信頼関係についてもう一度考えたほうが良いだろう。

 第2のポイントは、スピーチ・アクト(言語行動)である。ルフィ、ナミ、ゾロのセリフを分析していくと、基本的に前向きでポジティブなセリフが多い。麦わらの一味のなかにはネガティブ思考の固まりのようなキャラクターもいて、私は彼に共感することが多いのだが、残念ながら彼は今回の分析対象外である。ルフィらの言語がポジティブかネガティブかということよりも、ここでは言語が行動そのものになっている、いわゆるスピーチ・アクトに注目したい。