小山和伸(神奈川大学経済学部教授)

 NHKがネット同時配信を行い、利用者から受信料を徴収し、さらに将来ネット配信事業を本来業務としたい趣旨を明らかにしているが、そもそもNHKに受信料を強制徴収する資格があるのであろうか。本稿では、NHKの番組内容の検証を中心にその公正性を考えてみたいと思う。

NHKの受信料はどうあるべきなのか=2015年1月28日(斎藤浩一撮影)
NHKの受信料はどうあるべきなのか
=2015年1月28日(斎藤浩一撮影)
 公共放送局としてのNHKについては、その経営資源が国民一般からの受信料徴収に依存し、さらに政府からの補助金をも受けていることから、その報道姿勢の公正性についてひときわ重視すべきである。NHKの報道姿勢については国会の場でもしばしば議論になってきたが、監督官庁である総務省は、政府の言論統制の非難を恐れるためか、「個別の番組への言及は避けたい」との立場を貫いている。しかしながら、個別の番組内容に立ち入った検証なくして、報道姿勢全般の傾向を評価することは決してできない。従って本稿では、過去に放映された実際の番組を検証することによって、NHKの報道姿勢の実情に迫っていきたいと思う。

 まず、受信料制度自体が憲法違反ではないかとの意見はかなり以前からあり、たびたび裁判になっている。NHKが視聴者に対して受信料強制徴収の正当性の論拠としているのは、放送法64条である。すなわち、NHKを受信できる受信設備を設置した者はNHKと受信契約を結ばねばならず、NHKは契約者から受信料を徴収しなければならないという趣旨の条文である。天野聖悦著『NHK受信料制度 違憲の論理』(東京図書出版会)によれば、かかる強制契約は「契約自由の原則」という近代私法の大原則に違反しているという。さらに、NHKとの契約を逃れようとするとテレビを廃棄しなければならず、そうすると民放も全て見ることができなくなるから、国民の「知る権利」が侵害される。

 受信料制度の違憲性について、判決は現状全て否定的である。判決文の多くに、受信料強制徴収は全国あまねく良質な放送サービスを提供するための資金調達上必要なもので、公共の福祉に反しないという判決理由がある。しかるに、NHKの番組の多くは到底「良質な放送サービス」とは言いがたい、ひどく偏向したりさらには事実に反する内容であったりする。つまり、このような番組を全国あまねく配信されてはたまらないといった実情があることを、裁判所は理解しようとしない現状がある。