放送法は、昭和25(1950)年に連合国軍占領下で公布された。テレビ放送は、昭和28(1953)年にNHKをはじめとして民放各社の開局が続くが、そのころの番組放送はNHKのみで、民放はほぼテストパターンの放映に限られた状態であった。すなわち、この時代にテレビを買うということはNHKを見ることを意味していた。従って、テレビを買ったら受信料を払えという論理も、この時代には正当性があったといえる。

 また、このころはテレビ普及率も10%に満たなかったから、放送サービスの拡充をテレビの保有者が支払う受信料によってまかなうという制度は、受益者負担の原則にも合致していたと言ってよい。しかしながら、その後テレビの普及率は飛躍的に増大する。さらに民放各社の番組も拡充され、その多様性も拡大していく。
有識者でつくるNHK受信料制度の検討委員会の初会合。左奥はNHKの上田良一会長=2月27日、東京都渋谷区(川元康彦撮影)
有識者でつくるNHK受信料制度の検討委員会の初会合。左奥はNHKの上田良一会長=2月27日、東京都渋谷区(川元康彦撮影)
 こうなると、NHKのみが受信料を強制徴収して、それをNHKの放送事業のためだけに支出するという受信料制度の正当性はなくなる。むしろ、テレビに一定の税金をかけて放送事業全般の財源とするか、あるいは一般の税収から放送サービスへの支出を行う方が公平である。さらに、NHKがどうしても受信料を徴収したければ、契約者のみから徴収すべきであろう。実際に衛星放送で行われているように、契約しない者を受信できないように排除する、いわゆるスクランブル放送は、現在技術的に実行可能なわけだから、NHKは直ちにこの方法を地上波にも適用すべきである。さらには、視聴時間に応じて受信料を徴収することも、技術的に可能なはずで、視聴者は見たい番組だけ買う、NHKには売れた番組だけ収入が入るという、当たり前の企業活動と消費者主権が実現されるべき時が来ている。

 これについて私が代表理事を務める「メディア報道研究政策センター」は、平成24(2012)年、NHKが受信者を特定し受信者のみに課金することが今や技術的に可能であるにもかかわらず、それを放置してNHKを見ていない者を含めたテレビの所有者全部から受信料を強制徴収することを定めた放送法64条1項は、憲法29条(財産権)および84条(課税の要件)に違反するとして、東京地裁に告訴した。

 これに対する判決は驚くべきもので、NHKの受信を希望する者にのみ課金した場合、NHKの財源が不足して公共放送の享受を国民に保証できなくなる可能性があるから、放送法64条1項は公共の福祉に反せず違憲とはいえない、というものであった。