スクランブル放送や視聴時間制の受信料徴収で財源を不足させたくなかったら、NHKは視聴者が喜んで見たくなるような魅力的な番組づくりに努力すべき、というのが事業者として当然であるし、視聴者は見たくもなく見てもいない番組に代金を支払わなくて良いというのも、消費者主権の常識であろう。

 NHKが受信料強制徴収の論拠としている64条は、いわば視聴者側に課せられた義務規定といえる。これに対して、民放も含めた放送各社に対する義務規定として4条がある。放送法4条は、公序良俗に反しない報道や政治的中立、事実に反しない報道、論争のある問題の公平な報道、等を定めている。しかし、NHKの報道の中にはこの規定に違反しているものが少なくない。

 以下では、論争の余地もなく逃れようもないNHKの違反番組の事例を挙げて、いかにNHKが自分たちに都合の良い64条のみを振り回して、4条を踏みにじっているかを明らかにしていくことにしよう。以下のNHKの放送法違反事例に関しては、『これでも公共放送かNHK!』(小山和伸著/展転社)に依拠している。

 まずは1996年に放映されたNHK教育の番組「51年目の戦争責任」に注目したい。古い事例になるが、今日なおいわゆる慰安婦問題は全く沈静化しておらず、それどころかソウルや釜山の日本大使館・領事館前に慰安婦像なる建造物が、事実に反する碑文とともに設置され、その設置場所も韓国内にとどまらず既にアメリカに複数設置されており、さらにオーストラリアなどへもこれを波及させようとの画策がはたらいている。従って、21年も前に報道されたこの番組の悪意は、決していまだ色あせてはいない。
「NHK番組改変問題」当時の松尾武元放送総局長(左)も出席し会見した。=2005年1月19日(大山文兄撮影)
「NHK番組改変問題」に関する会見に臨むNHKの松尾武元放送総局長(左)=2005年1月19日(大山文兄撮影)
 事実に反する慰安婦強制連行が流布される潮流を作ったのは、朝日新聞とNHKの報道であった。最初のきっかけとなったのは吉田清治著『私の戦争犯罪』だが、平成7(1995)年に著者自身がその虚偽記述を認めている。その本人の自供から19年もたった後、朝日新聞は強制連行記事について撤回し謝罪した。しかしながら、NHKは歴史資料を改竄(かいざん)までして強制連行説を裏付けた詐欺番組について、いまだに撤回も修正も謝罪も一切していない。

 この番組においてNHKは、「陸支密大日記」(防衛省防衛研究所蔵)という史料を改竄(かいざん)して紹介し、慰安婦強制連行を軍が指示していた証拠が出てきたと報じた。しかし同史料は、慰安婦の募集に当たっている業者の中に、ことさら軍との関係があるかの如く吹聴して、甘言をろうしたり中には誘拐まがいの方法で女性を集めるような悪徳業者がいるので、軍は憲兵や警察と協力してしっかり取り締まらなければならない、という趣旨の通達文である。