NHKは、この史料文中の「慰安所設置」「従業婦等ヲ募集」「募集ノ方法誘拐ニ類シ」「派遣軍ニ於テ統制」「関係地方ノ憲兵及警察当局トノ連繋」等を巧みに切り貼りして、軍が警察などと連係して誘拐に類する方法で婦女子を集めるよう指示していた証拠だと、ゲストの吉見義明中央大学教授の解説とともに報道した。

 同史料のコピーを持っていた私は、番組直後に電話によって抗議した。番組担当のプロデューサーは当初「テレビ画面は限られているので全文をそのまま映すことはできなかった」などと言い訳したが、40分にわたる論争の末に番組の不公正を認めた。翌日、この経緯に基づき受信料支払いを拒否する旨、当時の川口幹夫会長あてに内容証明郵便を送付し、以来受信料の不払いを続けている。当番組の放映時期が、吉田清治著者自身の虚偽本告白の翌年であることからも、番組製作の悪意を知ることができる。
「NHK番組改変問題」でNHK石村英二郎・放送総局副総局長会見=東京都渋谷区(栗橋隆悦撮影)
「NHK番組改変問題」で会見するNHKの石村英二郎・放送総局副総局長=東京都渋谷区(栗橋隆悦撮影)
 しかし実は、くだんの吉田著書の虚偽性は早くも平成元(1989)年、同著の韓国語版出版と同時に済州島の郷土史家金奉玉氏によって暴かれている。もしこの時点で、メディアがこの事実を正確に報道していれば、「戦後50年」に向けて加熱の一途をたどった反日運動や慰安婦賠償請求、河野談話などの動きは大きく変わったものになっていたかもしれない。しかし、反日メディアはこの事実を決して伝えようとはしなかった。

 2001年に放映された番組「ETV2001 問われる戦時性暴力」は、バウネット・ジャパンなる市民グループが主催した、裁判形式による集会「女性国際戦犯法廷」を極めて好意的に紹介したものである。NHKスタジオの番組司会者は、弁護士無しで検事役が史実に反する旧日本軍の慰安婦強制連行や性奴隷制度を一方的に糾弾するこのえせ法廷集会について、「裁判形式上問題があるにせよ」と前提にしつつも「旧日本軍の蛮行を改めて問いただす意義」を強調した。

 まじめな事実検証からほど遠い集会の肯定的・支持的な報道は、放送法4条の3「報道は事実を曲げないですること」に違反している。もしNHKが、「性奴隷制度の存在を前提とした団体の集会という事実を報道しただけだ」と逃げを打ったとしても、逆の立場の集会を同等に報道していない限り、同法4条の2「政治的に公平であること」および、同法4条の4「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反していることは明らかである。