ネット受信料金については、現行の地上放送と同額(口座振替2カ月払いで2520円)とする案が有力だという。「地上波より安くするとテレビよりもネットでの視聴が増えてしまう」との懸念に加え、営業の現場からは「アンテナやケーブルなどで設置が確認しやすいテレビと異なるケータイやスマホは、今時持っていない人がいないのが常識とはいえ『持っているでしょ』と決めつけるわけにもいかない。地上波よりも安くすれば契約が取りやすいわけでもない」との声が上がっている。

 また、民間放送事業者は「ネット常時同時配信は、NHKがネット事業をさらに強化することにつながり、将来的に通信分野に進出していく可能性も想定される。放送法に基づくNHKの通信分野へ進出することが許されるのか、許されるとすればどんな限度を設定すべきかも考える必要がある」とその巨大化を警戒する(編注:放送法によりNHKの業務範囲は制限されており、現行法上はNHKのすべての番組をインターネットで同時配信することはできない)。

 NHKの上田会長は、7月6日の定例会見での「同時配信は(付随業務ではなく)本来業務という認識か」との質問に、「NHKとしては放送が太い幹で、インターネット活用業務は放送を補完し効果を高めるものであるという考え方に変わりはない」と強調した。

 放送による受信料収入で成り立つNHKが、通信の一形態であるネット事業にどの程度の費用をかけるのか。その妥当性も厳しく検証されなければならないだろう。

原発やエネルギー問題について対談する小泉純一郎元首相=4月6日、東京都中央区(寺河内美奈撮影)
小泉純一郎元首相=4月6日、東京都中央区
(寺河内美奈撮影)
 NHK経営陣にとって、ネット受信者との契約・受信料徴収以上に悩ましいのが職員の犯罪・不祥事だ。

 2004年、『NHK紅白歌合戦』元チーフプロデューサーによる6200万円の詐欺罪、編成局エグゼクティブプロデューサーら2人のカラ出張による約320万円の不正受給、前ソウル支局長による総額4400万円の経費水増し請求などが相次いで発覚した。架空の飲食費の請求もあった。

 これを受け、小泉純一郎内閣の竹中平蔵総務相の下で、受信料の値下げ、経営委員会の理事会(執行機関)に対する監督権限・ガバナンス(企業統治)の強化などを内容とする「政府・与党合意」がまとまった。2006年6月のことである。だがそれ以降も、NHK本体や関連団体・子会社の職員の犯罪・不祥事は絶えることはなかった。