窃盗未遂や建造物侵入に加え、勤務時間中に全国の放送局を結ぶ報道用端末にアクセスして知り得た特ダネをもとに、インサイダー取引をしていた30歳前後の記者やディレクターもいた。2013年10月には、「音響のプロフェッショナル」として国内外から高い評価を受けていたNHK放送技術研究所の主任研究員が、業者に架空工事を発注する見返りに百数十万円の物品を受け取っていたことが明らかになった。

 倫理・行動憲章の策定、報道局内の一定の範囲内での株取引の禁止、職員教育・研修の徹底など、そのたびに対策を打ち出すのだが、あとは殺人事件で職員が逮捕・有罪ともなれば、ほぼすべての刑事・経済犯がそろいかねないありさまだ。しかも年代や所属部署、肩書を問わないから始末に負えない。

 「NHKにはグループ企業を合わせて約1万6500人の職員がいるのですから、そりゃあ不届き者もいますよ。みんながみんな身ぎれいで犯罪や不祥事に無縁とはいきません。憲章に署名させ、何かの誓約書を書いてもらってもゼロにならないのですから」

 NHK理事経験者がこうため息交じりに話せば、現在関連会社の役員を務める報道局出身者も「打つ手なし」といった表情で次のように語った。「NHKと名がつくすべての法人・団体・企業の職員にGPS機能の付いた業務用端末を持たせて24時間監視するわけにもいきませんでしょう。監視のための職員確保も難しい(笑)。何よりもそんなことをすれば職場の雰囲気がギスギスしてきます」

 今年1月には、横浜放送局の営業部勤務の40代職員が、受信料の過払い分を視聴者に払い戻すように装った架空の伝票を作り、部の運営費から現金を引き出し数十万円着服していた事案が発覚した。しかもその職員が自殺しただけではなく、それらの事実を約3カ月間公表していなかったことも明らかになった。同月13日、閣議後の記者会見で、高市早苗総務相はNHKをこう批判している。
4Kと8Kのチャンネルを割り当てられた放送事業者の首脳に認定証を手渡す高市早苗総務相=1月24日午後、総務省
4Kと8Kのチャンネルを割り当てられた放送事業者の首脳に認定証を手渡す高市早苗総務相=1月24日午後、総務省
 「ガバナンスを強化するこれまでの取り組みが不十分だった」

 今年2月には、初任地の甲府放送局から山形放送局酒田支局へ異動した28歳(当時)の記者が、両県での婦女暴行事件の容疑者として逮捕されている。NHKの営業部門の職員は、「おカネにまつわる不祥事に次いで視聴者の受信料支払いストップの理由になるのが、放火や暴行、強制性交といった重犯罪です」と頭を抱える。

 NHK内には、「2019年にはネットの同時配信を始めたいが、その時期やネット受信料の実現にも影響するのでは」と先行きを心配する向きもある。