耐用年数で決まってくる減価償却の中でも、建築構造物は、償却年数が長く劣化が緩慢なので、受信料収入・その他事業収入が安定的に増え続けているNHKといえども加速度償却(加速償却ともいい、耐用期間の初期に大きな割合の償却をする減価償却の方法)は行いにくい。
NHK放送センターの看板=2011年4月24日、東京都渋谷区
NHK放送センターの看板=2011年4月24日、東京都渋谷区
 だが、製品のモデルチェンジが速い固定資産である機械・装置はそれが可能だ。電子機器の割合が急増し数年で新規モデルが登場する機械・装置の耐用年数は見積もりにくく、かなりの主観が伴うといわれる。NHKの場合、取得原価に対する償却進捗(しんちょく)率は80%(2016年度は81・4%)を超えている。

 償却進捗率は固定資産の減価償却の進展割合を示すもので、償却の進展具合だけではなく資産の古さも確認できる。進捗率が小さい会社は体力がないということになるが、50%以上あれば良好水準といわれる。ちなみにトヨタ自動車の償却進捗率が66・5%だから、NHKの償却進捗率がいかに良好な水準にあるのかがよく分かる。

 有形固定資産も過大だ。先に述べたように電子技術のイノベーションの進行が速いこともあってか、有形固定資産への投資は右肩上がり。同局では、総資産に占める有形固定資産の比率が45%以上を占める。日経経営指標ではこれらの比率が算出されていないので比較できないが、NHKの有形固定資産は明らかに多いと言っていいだろう。

 巨額の投資ができるのも、減価償却費を早期に多額計上できるのも、キャッシュフローが潤沢だからである。事業活動による(=営業)キャッシュフローは、毎年1000億円超の水準で安定的に推移している。

 高い自己資本比率もNHK財務の特徴の一つだ。すでにご承知のように、最近、財務安定性を計る指標として、自己資本比率が最も重視されるようになった。NHKは、2006年に62%だった自己資本比率を2016年度末に65・6%にまで高めている。

 残りの34・4%が負債だが、2011年11月11日の経営委員会の議事録によれば、260億円あったNHKの有利子負債はこの3年間でゼロになっている。2016年度682億円の現金預金があり、これまた2425億円弱の短期保有有価証券(同年度)、985億円超の長期保有の有価証券(同)があるのだから、そもそも有利子負債を負う必要がないのである。

 財務・年度の収支情報を公開すれば、年度単位の必要な支出と将来のリスクに備えた一定の内部留保を超えた額(収入)は本来徴収してはいけないという、いわゆる受信料積算の根拠となっている「総括原価主義」が崩れかねないと考えているならば、大きな間違いである。

 契約拒否や受信料の長期滞納者に対する民事手続きの強化、簡易裁判所・地方裁判所での訴訟合戦を経て、受信料の支払いも法的義務化へ。4K・8Kハイビジョンの普及など課題が山積する中で、子会社を含め巨額の内部留保(金融資産)を抱えるNHK。まずはその財務実態について広く情報公開し、視聴者に丁寧に説明責任を果たすとともに、早急に適正かつ公正な受信料体系を示すべきだろう。